魚を食べなくなった日本人の食文化に、未来はあるのか

最近「日本人の魚離れが進んでいる」と言われています。

果たして事実なんでしょうか。実際に少し調べてみました。

目次

統計データが示す「深刻な魚離れ」

下のグラフは、日本人1人当たり1日当たりの、食品群別平均摂取量の推移(1975年~2017年)を示したものです。

食品群別摂取量推移

【出典】厚生労働省 国民健康・栄養調査

この42年間で、肉類は増加(+53%)しています。
なおその間、摂取量全体も増加(+44%)しているので、肉類は漸増、という感じです。

一方、同じ期間で、魚介類は32%も減っています。
摂取量全体に対する魚介類の割合で見ると、1975年の6.7%に対し、2017年は3.2%ですから、魚介類は半減以上の激減、という状況です。

長期的傾向としてハッキリでているので、何か構造的な原因があるものと思われます。

更に原因を究明するために、別の統計にもアクセスしてみました。
下のグラフは、2017年の魚介類の摂取量を、年代別にみたものです。

年代別魚介類摂取量

【出典】厚生労働省 国民健康・栄養調査

40代までとそれより高齢層では、クッキリ差が出ました。端的に言うと、40代以下は年寄りの6割程度しか魚介を摂取しないのです。

年齢でこれだけの差が出るとは予想しておらず、少しショックです。

食生活、食習慣というものは、そう簡単に変わるものではありません。
食育に関する学説によると、人間の味覚は10代で決定されるとも言われています。

そういう文脈で考察すると、恐らく50代半ばを境に(40年程前彼らが10代だった頃に)食生活が相当ドラスティックに変わった、と思われます。

それでも魚介好き?

こうみてくると、今度は、消費者の「意識」を探りたくなります。またまた別の統計にアクセスしてみました。

下のグラフは、水産物の購入意向等のアンケート(農林水産情報交流ネットワーク事業の消費者モニター856人を対象に実施)の中で、「今後、魚介類を食べる頻度を増やしたいと思いますか?」という質問に対する回答結果です。

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【出典】農林水産省 食料・農業及び水産業に関する意識・意向調査(平成28年3月29日公表)

驚くことではないのかもしれませんが、何と、3人のうち2人が「頻度を増やしたい」と思っています。

つまり、少なくとも魚介類の良さは十分意識している、ということです。

でも前項のとおり「食べなくなっている」のは事実なので、ここに、消費行動に踏み出さない(あるいは、踏み出せない)何かしらの「阻害要因」があると見るべきでしょう。

それを探るには、「今までどおりでよい」or「減らしたい」の回答者への更問結果が参考になります。

「魚介類を食べる頻度を増やしたいと思わない理由は何ですか?」という質問に対し、「その他」を含む8択複数回答の上位には、

  • 鮮度が悪くなりやすく、買い置きができないから
  • 調理が難しい、面倒だから
  • 価格が高いから

が並びました。

多忙な消費者の、「効率よく安く食べたい」という声が聞こえてきそうです。

今更ながら、魚介類の栄養効果について

三度の飯より魚介好きなオヤジとしては、ここはひとつ、栄養豊富な魚介の魅力を再認識してもらいたいものです。

少し堅いハナシになりますが、メリットをまとめてみました。

1.用途が広い

刺身、煮物、焼き物、塩漬け、味噌漬け、粕漬け、乾物、練り物、缶詰など、生からあらゆる加工品まで、そのバリエーションの豊富さは、そのまま日本の魚食文化の多彩さを物語ります。

2.一般に、獣肉の蛋白質よりアミノ酸の高いものが多い

特にチスチン・メチオニンなどイオウを含むアミノ酸は、脳卒中予防や血中コレステロール低下に効果があることが知られています。

3.多価不飽和脂肪酸(EPA・DHA)を多量に含むものがある

EPA(エイコサペンタエン酸)は、血液の健康に関与し、脳梗塞や心筋梗塞などの血栓症を予防したり(いわゆる「血液サラサラ」)、コレステロール値や中性脂肪を低下させ生活習慣病を予防する働きがあります。また、DHA(ドコサヘキサエン酸)は、脂質異常症を予防し、動脈硬化や虚血性心疾患の発症を抑え、記憶力の上昇など脳の健康にも重要な働きもします。

4.各種ビタミンを多く含むものがある

代表的なビタミンで以下のとおりです。

  • ビタミンA(ウナギ・穴子・ギンダラ・アン肝など)
  • ビタミンD(サケ・カレイ・カジキ・ウナギなど)
  • ビタミンB1(ウナギ・タラコ・スジコなど)
  • ビタミンB2(ウナギ・サバ・シシャモなど)
  • ナイアシン(ほとんどの魚類、特にイワシ・カツオ・サケ・サバ・サワラ・ブリ・マグロなど)
  • ビタミンB12(肝などの臓物や黒い皮に多い)
  • ビタミンE(アン肝など)

5.ミネラルを多く含むものがある

鉄(アユ)、亜鉛(イカナゴ)、銅(イワシ・カツオ)、カルシウム・リン(稚魚や小魚の骨)、他にもマグネシウム・マンガンなどです。

6.タウリンを多く含むものがある

タウリンは、疲労回復だけでなく、血中コレステロール低下に効果があることが知られています。貝類やカツオ・ブリなどが代表格です。

7.魚卵はさらに栄養価が高い

スジコ・イクラ・カズノコ・タラコなどです。

(多少強引な)まとめ

お父さん、お母さんは、忙しさにかまけていないで、四季折々につけ、旨い魚介を子供と囲みましょう。
魚介の旨さをよく知るお爺さん、お婆さんは、達者なウチに孫に旨い物を食べさせましょう。

折角美しい日本の「食」文化の代表である魚介が食べられなくなり、結果として外国の富裕層に供給が回ってしまい、手に入りにくくなったり、ますます価格が高騰したり、というのは、烏賊にも忍びない。

オヤジも、死ぬまで旨い魚介を喰っていたい。

それ以上に、孫子の代まで文化を継承し、旨い魚介を喰ってもらい鯛もんです。

コメント

  1. debux2 より:

    う~む・・・考えさせられる話ですね。
    この仮説によると、1980年±5年あたりに転換点みたいなことがあったことになりますね・・・
    マクドナルド、吉野家、デニーズ、ほか弁、コンビニ弁当・・・
    自分に引き寄せると、そんな時代だったでしょうか。つまりはファーストフード?弁当?外食?自宅で作らない?

  2. souxouquit より:

    debux2さん!
    転換点は何だったのか。高度成長真っ只中の時代へ探索しに行かねばなりませんね。

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