春一番が吹く中、築地に買い出しに行きました。
今日は大切なお客さんが来るから、フグでおもてなしをするのです。
目次
何故築地の仲卸から買うのか?
流通経路を遡ることができれば、それだけ安く仕入れることができます。そんな訳で、私はしばしば築地場内の仲卸商へ出向きます。
例えば、友人を呼んでフグ鍋のパーティをするとしましょう。外で食べれば一人前2万円コース。ですが、築地に行けば、1kg(たっぷり3~4人前分)の磨きフグが、1万円以下で手に入ったりするのです。
安く買えるカラクリをご理解いただくために、水産物の流通経路を少し説明しましょう。
先ず、水揚げ、養殖、加工された水産物は、産地市場の卸売商によって消費地へ出荷されます。ここで言う「消費地」とは、通常は中央卸売市場、つまり築地です。築地の役割は、大きく以下の2つです。
- 荷受:魚を各産地から集荷(買い付け)しセリに掛ける
- 仲卸:セリ落した魚を市場内店舗で小売商へ販売する
要は、荷受けとは築地の仕入担当、仲卸とは築地の営業・販売担当にあたります。
私が向かうのは、仲卸商です。鑑札(セリの参加資格)の帽子をかぶった人が居るところ、と言えばわかるかもしれませんね。
従来「小売商にしか販売しません」という仲卸商が多かったですが、最近は、一般消費者へも普通に販売してくれます。但し、元々は卸業ですから、少し注意が必要です。
小ロットでは売ってくれない
町の魚屋さんや飲食店は、大量に水産物を仕入れます。そういう人に売るのが第一義的機能ですので、仲卸商は我々一般消費者が欲しいロットでは頒けてくれないことも多いです。
例えば旨そうな真蛸を見つけたとしても、通常は1匹でしか売りません。1㎏アップの大物でようやく半分で売ってくれる、というような感じです。
忙しい時間帯に邪魔しない
毎日買いに来るプロを大事にしていますから、その人たちが真剣勝負で目利きしている最中にお邪魔するのは、双方にとってよくありません。あらかたプロが引けた時間帯、概ね9時過ぎぐらいに行くといいでしょう。
もし目当ての仲卸商が忙しそうにしていたら、周りの他店を見て時間を潰してください。相場も判るし、見ているだけでも楽しいものです。お互い気持ちよく買い物したいですよね。
冬の味覚と言えばフグ
独特の旨味と食感が特徴の高級魚トラフグ。刺身、ちり、〆の雑炊。たまりませんね!
フグは、豊臣秀吉が「禁止令」を出して以来ほとんど食べられていませんでした。しかし伊藤博文がその旨さに感心したことから明治21年に山口県で解禁し、その後全国に愛好家が広まったと言われています。
山口では縁起を担ぎ、フグのことを「ふぐ(不遇)」ではなく「ふく(福)」と呼びます。天然トラフグの漁期は9~3月に限定し、資源回復に努めています。養殖は一年中ありますが、旬はやはり12月~2月ぐらいです。
手軽に楽しめる身欠きフグ
私が買い求めたのは、いわゆる「身欠きフグ」と分葱です。フグは養殖トラフグの1㎏もの。税込9,180円のなかなか立派なものです。
そして実は高価なのが分葱。これだけの量(半把)で税込何と1,400円です。
それでも5~6人前はたっぷりとれる分量ですから、随分お得です。
「身欠き」とは「磨き」と表記する場合もありますが、有毒部位除去済のフグです。要は、フグ調理師免許を持っていなくても捌ける状態で売っている、という訳です。
以前は、フグのあらゆる加工は「フグ調理師免許」保有者に限られていました。身欠きの場合でも、丸フグ(水揚げされたままのフグ)でも同様でした。ところが2012年10月、ふぐ調理師がいない都内の飲食店や魚介類販売店でも、身欠きふぐを仕入れて調理、加工、販売できるよう、規制が緩和されました。
箱を開けると、こんな感じです。頭と身、皮、カエル骨、くちばし等にバラバラになっています。
最近では身欠きはネットでも買えるので、試された方もあるかもしれません。また、身欠きの状態からの捌き方も、情報が沢山ネットにアップされていますから、チャレンジしてみるのもいいかも知れません。
脇役も大事
お高い分葱のハナシもしましたが、実はポン酢もポイント!です。
私がお勧めするのは、大津屋さんの「ふくしょうゆ」。是非一度使ってみてください。甘すぎず、だいだい果汁の香りが効いたこのポン酢は、あなたのポン酢感を根底から変えること請け合いです。
私はふく以外にも、あらゆる鍋物から白身の刺身にまで、何でも使っています。
絶品です。
変わりゆく築地の姿と魚河岸文化
ところで、築地と言えば移転で揺れています。知り合いには「移転で文化は霧散してしまうだろう」と悲観的な見方をされる方も多いです。少しでも今の風景を留めておきたく、普段は全く撮らない写真を、いくつか撮ってきました。
場内の楽しみは、買物のあとの食事です。以前、職場が勝鬨橋のすぐ傍にあって、よく来たもんです。とにかく食の専門家が集まるところですから、とにかく旨い店が揃っています。種類も、寿司屋に限らず、洋食屋、ラーメン屋、カレー屋から団子屋まで、実にバラエティーに富んでいます。
例えば、吉野家の一号店もここでオープンしました。BSE騒ぎでアメリカ牛が輸入できず全国の吉野家から牛丼が消えた時も、この店だけは和牛で牛丼を出し続けた、という話は有名です。
この写真は、荷受けの東都水産が経営する「東都グリル」。ここのメニューは、刺身定食からカツカレーまで幅広いのが特徴で、築地で働く人たちの胃袋をしっかり満たしてくれるお店です。もちろん、一般の人だって入れますし、1時間以上並んで気取った寿司屋に入るより、私は好きですね。
また、知る人ぞ知る、洋食の老舗「豊ちゃん」。トンカツ、カキフライ、オムライスなどが特に旨く、贔屓にしていたお店のひとつでした。非常に残念なことに、2017年に惜しまれつつ閉店してしまいました。これも、例の豊洲移転で揉めていたから、ということのようです。なんにしてもさみしい限りです。
波除神社の前を疾走するターレー。正確にはターレットトラックと言い、もちろん公道も走れます。こんな風景も見られなくなるかもしれません。
コメント
河豚!
冬の鍋もさることながら、夏場の薄造りも最高!
一年中食べられたら幸せでしょうなぁ、
と感じおるしだいで・・・
debux2さん!
コメントありがとうございます。
そうなんですよね。同じ食材でも季節によって味わいが変わりますよね。
一つの食材を、通年で、それぞれの季節に応じて楽しむのもすごくいいですよね。