秋~冬に旨い甘海老と、絶品タラバエビ科の海老まとめ

「あまえび」、「なんばんえび」などとも呼ばれるホッコクアカエビ(北国赤海老)は、秋から冬に旬を迎えます。アミノ酸由来成分の旨みが最高です。

目次

性転換するタラバエビ科の海老は絶品に旨い

あまり知られていませんが、「あまえび(甘海老)」とか「なんばんえび(南蛮海老)」として市場に流通するのは、標準和名で言うと、日本近海で獲れるホッコクアカエビと、北大西洋で獲れるホンホッコクアカエビです。アマエビという標準和名はありません。いずれもタラバエビ科 タラバエビ属に分類されます。

「あまえび」以外にも、「ぼたんえび」などもタラバエビ科に属します。この科の海老は総じて旨いために市場取引も活発ですが、標準和名が一般に知られた名と食い違う例も多いので、大変紛らわしいです。解りやすいよう、代表的なタラバエビ科の仲間を表にまとめてみました。

【表】タラバエビ科の代表的な種の、市場一般名と標準和名のまとめ

ところで、タラバエビ属とモロトゲエビ属の仲間は、雄性先熟の性転換をするのが大きな特徴です。

若い個体はまずオスとして繁殖に参加し、5歳ころにメスになり、最終的な寿命は10年以上とされています。タラバエビ科の他の属では性転換の例は知られておらず、このあたりが旨さのヒミツなのかもしれません(あくまで妄想)。

ちなみに甘海老は、この性転換前のオスが一番味がいい、と言われます。子を沢山抱いたメスの甘海老も旨いですが、オスを指定買いしてみるのもいいと思います。

旬は長くほぼ通年流通する

一般的には、晩秋から冬にかけての海水温度が下がる時期が旬とされています。富山や新潟、石川などの北陸地方では7~8月の休漁期以外通年水揚げがあり、休漁明けの9月上旬から10月も旬とされています。

一方、北海道のオホーツク沿岸では、流氷が迫る1~2月は漁が出来ません。流氷が離れる3月に一斉に漁が解禁となります。もっとも漁獲量の多いのは北海道西岸で、北海道での甘エビの漁獲高は全国での7割前後を占めますから、1~2月を除くほぼ通年で流通する、と言ってもいいかもしれません。

また当然ですが、冷凍輸入されるホンホッコクアカエビも通年で流通します。ちなみに、近年まで、ホンホッコクアカエビはホッコクアカエビの亜種と見做されていたぐらいですので、姿や味の違いから両者を見分けることは、ほぼ不可能です。魚屋さんを信用して、輸入モノか国産かを確認してください。

甘さのヒミツはアミノ酸由来成分

名前の由来ともなっている「甘さ」を感じさせるのは、グリシン、プロリン、アラニン、アルギンなどのアミノ酸ですが、生きているホッコクアカエビは、この甘味成分を持っていません。ですから、水揚げされた直後の新鮮な個体は、全然甘くありません。

深海に棲息するホッコクアカエビは、低温でもエサを分解できるよう、蛋白質分解酵素を豊富に持っています。死後、多少時間が経過すると甘みが感じられるようになるのは、蛋白質を自己消化してアミノ酸が生成されることと、自己消化の結果出来た「トロミ」が、アミノ酸を舌の上に長く留める働きをすることが理由だと言われています。

とはいえ、輸送時間などを考えれば、通常は店頭に並んでいる時点で最も食べごろのはずですから、買ってからは時間をかけずすぐに食べた方がいいと思います。

漁獲法

主に海老カゴで、また底引き網で獲ります。当然カゴ漁モノが鮮度もよく、その後の品質管理も、船の生け簀で活かし出荷直前に箱詰めされるなど、徹底している場合が多いです。結果的に、カゴ漁モノは底引き網モノと別物といっていいほど、高値で取引されます。

食べ方

生食だけでなく、揚げる(素揚げ、天麩羅、フライ)、汁(みそ汁)、ご飯(ピラフ、チャーハン)など、いろいろ調理されます。甘海老を具にしたクリームコロッケを札幌で食したことがありますが、もちろん旨かったです。

生食

もっとも一般的な食べ方は刺身でしょう。殻が柔らかく身離れがいいので、食べる時まで殻つきでも問題ありません。水分が多く、所謂エビらしいプリプリの食感はありませんが、非常に甘味が強く旨いです。頭部をつけたまま出し、味噌をすすって食べるのも、大変結構です。

天麩羅、素揚げ

尾だけ残して剥き、小麦粉をまぶして衣をつけて高温で揚げます。水分が多い分豊潤で、表面が香ばしく仕上がります。加熱により甘みが増し、旨いです。また、刺身で余った頭を素揚げにし、塩をひとふりしても、絶品酒のアテが簡単に出来上がります。

ボイルアカエビ

冷凍輸入のホッコクアカエビを単純に塩茹でしたものですが、これがなかなか結構です。固くない殻は剥かずに残しても、問題ないどころか、固い食感も同時に楽しめる一品になります。本来の甘さと塩加減で、いくらでも食べられてしまう酒のアテです。

味噌汁

水から煮出して味噌を溶くだけでできる、超簡単料理です。それでいて、特に頭の部分から出る出汁は、味噌との相性が抜群で、非常に旨いです。より味わいを増したいなら昆布出汁などを合せてもいいでしょう。薬味はねぎのみで十分です。生食用に買ったものの鮮度が悪く、頭の味噌はちょっと生食を止めておこう、という場合は、迷わず味噌汁の具として再生させてあげましょう。

ピラフ

頭部を取り去り、尾だけを残して殻を剥いた「むきあまえび」というのが、手巻き鮨用としてスーパーなどにも並んでいます。殻がないと鮮度が判らなくなるので、また、大抵鮮度が良くない場合が多いので、個人的には好きではありませんが、これはこれで調理には重宝します。例えば、研いだ米に「むきあまえび」とバターと少しの青みを加えて炊けば、簡単にピラフが出来上がります。とても便利です。

干しアマエビ

主に日本海側の各地で作られていますが、丸のままカラカラになるまで干したものです。そのまま食べても旨いのですが、フライパンなどで軽くカラ煎りして食べると、香ばしさが一層際立ち、結構です。

甘えび塩辛

頭と尻尾を指でプチッとつまみとり、殻を剥いて薄い塩水で洗い、振り塩をして一日程度置きます。クセがなく甘海老自体の甘みが楽しめる一品です。もちろん珍味として販売されています。酒、米酢、米麹を加えて塩麹漬けにしても、これまた大変結構です。

コメント

  1. debux2 より:

    生鮮品を茹で&素揚げが大好きです。冷凍品は甘味が少ないand/or食感が良くない、ような気がします。

  2. Fish Lovers Japan より:

    debux2さん!
    生食じゃなくても旨い食べ方はありますね。おっしゃるように、冷凍モノは甘みや旨みが少ない気がします。

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