「和食の日」に日本人の食文化についてじっくり考えてみないか

11月24日は「和食」 の日(いい日本食)なのだそうです。いい機会なので、日本人の食文化について、あれこれ考えてみました。

世界の食文化の中にあって和食が際立ってユニークなのは、出汁などによるうま味の追及、その一点に尽きると思います。

和食の日

「和食」の特徴は、素材の味わいを活かす調理技術、健康的な栄養バランス、「うま味」の上手な活用などです。中でも和食の味の基本であるうま味(出汁)については、和食がユネスコ無形文化遺産に登録されたことをきっかけに、世界から注目されています。

【参考】農林水産省 食文化のページ 一般社団法人 和食文化国民会議のページ

日本人が発見した「うま味」は「umami」として世界へ拡がった

出汁の素

今では、4基本味「酸味(さんみ)・甘味(かんみ)・塩味(えんみ)・苦味(にがみ)」に加え第5の基本味=「うま味(うまみ)」が認知されていますが、19世紀以前には、科学的に立証されていませんでした。世界レベルで「うま味」を認識するようになったのは、極く最近のことです。

西洋文化圏では、フランス料理におけるフォン・ブイヨン・コンソメのようなうま味を活かした料理法もあったものの、肉料理においては肉の煮汁自体がうま味の供給源だったため、うま味を増すことに多くの意識は向けられませんでした。

一方日本の学者は、うま味の存在に早くから気づいていました。「出汁がきいていない」のは「酸味や塩味が足りない」のと違う、という経験に基づく認識を、科学的に証明しようと努力してきました。

そういった背景から、うま味物質は、世界に先駆けて日本人により発見されました。1908年、東京帝国大学の池田菊苗教授は、出汁昆布の中からグルタミン酸を抽出することに成功しました。更に1913年、小玉新太郎が、鰹節から抽出したイノシン酸がうま味成分であることを確認。1957年には、国中明が、シイタケから抽出したグアニル酸がうま味成分であることを発見しました。

上述の池田菊苗教授は、4基本味に加わるべきこの「第5の基本味」を、発表当時から「うま味(うまみ)」と表記していました。1985年に開催された「第1回うま味国際シンポジウム」の場で「うま味(umami)」という用語が国際的に使用され、従来「うま味」に相当する表現が存在しない欧米諸国の言語では、この第5基本味を「umami」と表現している例も多いといいます。

なお、しばしば「うま味を感じられるのは日本人だけ」という傲慢な暴論を見かけますが、これは根も葉もない嘘です。人間だれしもが感じることのできる味覚でなければ世界が評価する訳もなく、また、和食がユネスコ無形文化遺産に登録されることもなかったでしょう。

代表的な「うま味の3グループ」を押さえよう

うま味を呈する物質はアミノ酸系・核酸系・有機酸系のグループに分けられます。先ず、それぞれの特徴を押さえておきましょう。

うまみ成分

【出典】一般社団法人 日本アンチエイジングフード協会

アミノ酸系

アミノ酸は蛋白質を構成する最小単位です。蛋白質自体は無味ですが、それを構成するアミノ酸には甘味、苦味、うま味などを中心としたさまざまな呈味があります。うま味を呈するアミノ酸の代表的なものはグルタミン酸で、昆布、トマトや白菜などの野菜類、発酵食品に多く含まれます。

昆布出汁は上品で控えめなうま味を持ちますが、産地や収穫年によって出汁の風味が変わります。精進料理など、野菜の料理によく合います。

核酸系

核酸は、ヌクレオチドとも呼ばれるリン酸(アデノシン三リン酸(ATP)など)を含んだ物質です。うま味物質として知られるのは、干したきのこ類に多く含まれるグアニル酸と、鰹節、カタクチイワシやトビウオなどの魚の煮干し、肉類などに多く含まれるイノシン酸です。

グアニル酸を分解する酵素はおよそ45~50℃で活性化するため、干し椎茸の水戻しはできるだけ低温に保つようにしてください。

有機酸系

有機酸とは一般に窒素を含まない炭素化合物のことを言い、酢酸、クエン酸、乳酸、コハク酸などです。この中でうま味を呈するものは、コハク酸です。アサリハマグリ、シジミなど、貝類の独特な旨味はコハク酸によるもの。実は日本酒の旨味もコハク酸です。

うま味成分を煮出す際の留意点

硬水は、昆布のグルタミン酸や鰹節のイノシン酸のようなうま味成分の抽出を阻害することが判っています。軟水を使いましょう。

恐るべし!うま味の相乗効果

よく「植物性のうま味と動物性のうま味を合わせるといい」と言われます。このような「うま味の相乗効果」は、経験的に、様々な料理に応用されてきました。

  • 和食の基本出汁(昆布出汁[グルタミン酸]+鰹節出汁[イノシン酸])
  • 煮干し出汁の味噌汁(味噌[グルタミン酸]+煮干し[イノシン酸])
  • 鯛の潮汁(昆布出汁[グルタミン酸]+鯛[イノシン酸])
  • 鴨鍋(葱[グルタミン酸]+鴨[イノシン酸])
  • シジミの味噌汁(味噌[グルタミン酸]+シジミ[コハク酸])
  • 鶏の水炊き(昆布出汁[グルタミン酸]+鶏肉[イノシン酸])
  • キノコ鍋(白菜など野菜[グルタミン酸]+キノコ類[グアニル酸])

うま味成分が水に滲出する限界量があるので、昆布でも鰹節でも煮干しでも、量を倍にしてもうま味は単純に倍には増えません。上記のとおり、うま味は、単独で使うよりも、アミノ酸系のグルタミン酸と核酸系イノシン酸/グアニル酸を組み合わせることで、1+1=2ではなく、7にも8にも飛躍的に強くなることが知られていますが、これは学術的にも裏付けされています。

うま味の合せ技

【出典】特定非営利活動法人 うま味インフォメーションセンター

もうお分かりでしょう。「刺身[イノシン酸]の付けダレにトマト[グルタミン酸]を使う」とか、「刺身にはどうも日本酒[コハク酸]以外の酒は合わない」などということも、何も風説ではなくてうま味の点で理に適っているのです。

調理の時に、うま味成分のコラボレーションを少し意識すると、あなたの料理も飛躍的に旨くなる、かもしれません。

3割の子供が味覚を認識できない?

少し前ですが、こんな気になるニュースが報じられました。うま味どころか、4基本味さえ認識できないというのです。

30%余の子ども 味覚認識できず【出典】2014/10/20 NHKニュース(アーカイブ抜粋)

「甘み」や「苦み」などの味覚について、東京医科歯科大学の植野正之准教授の研究グループが調べたところ、基本となる4つの味覚のいずれかを認識できなかった子どもが全体の30%余りを占めたことが分かりました。

研究グループは、おととし、埼玉県内の小学1年生から中学3年生までの349人を対象に調査を行いました。その結果、いずれかの味覚を認識できなかった子どもは107人と全体の31%を占めました。研究グループによりますと、味覚を認識できなかった子どもはジュースを毎日飲んでいたり、野菜の摂取が少なかったりしたほか、ファストフードなどの加工食品を好む傾向も見られたということです。調査を行った東京医科歯科大学の植野准教授は、原因ははっきりしないものの味の濃いものを好むことが味覚の低下につながっている可能性もあるとしたうえで、「味覚が認識できなくなるとさらに味の濃い食品を好んだり食事の量が増えたりするため、食生活の乱れや生活習慣病につながるおそれがある。子どものたちの味覚を育てることが必要だ」と話しています。

このニュースは、それ以前のデータがなく経年変化が判らないし、そもそも子供の味覚が大人並みに成熟する時期も不明なので、何とも言えませんが、気の重くなるニュースです。

子供には、旨いものをじゃんじゃん食べさせてあげましょう。そして、日本の大切な「食文化」を、しっかり後世へ伝えていってもらい鯛と思います。

出汁しいたけ

魚を食べなくなった日本人の食文化に、未来はあるのか

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