魔か?女か? むちゃくちゃ旨いカジキはマグロの仲間ではない

カジキは「かじきまぐろ」とも呼ばれますが、カジキマグロという魚種は実際には存在しません。カジキ[スズキ目 カジキ亜目 メカジキ科/マカジキ科]は、マグロ[スズキ目 サバ科]と全く別の種です。

目次

主要カジキ3種類をしっかり知ろう

日本近海に棲息するカジキは以下の6種です。

  • マカジキ   (マカジキ科 マカジキ属)
  • クロカジキ  (マカジキ科 クロカジキ属)
  • シロカジキ  (マカジキ科 シロカジキ属)
  • バショウカジキ(マカジキ科 バショウカジキ属)
  • フウライカジキ(マカジキ科 フウライカジキ属)
  • メカジキ   (メカジキ科 メカジキ属)

このうち、市場に出回っている主要3種類のカジキを、味が良く高級な順番に説明します。

【リンク】カジキマガジン

マカジキ(真梶木、真旗魚、真舵木、Striped Marlin)

地方によっては、マカ(関東・東北)、サワラ(金沢)、ナイラゲ(高知)などと様々に呼ばれます。熱帯・温帯の海域に広く分布していて、比較的沿岸海域に集まります。古来より日本の食文化になじみ深い魚種で、豪快な「突きん棒漁」(船首の突き台からモリで水面を走るカジキを突く漁)で漁獲するのは、このマカジキです。体側面の綺麗な青い縞模様が特徴的で、体長3m、重さ120kgぐらいに成長します。

マカジキはカジキの中で最高級品とされていて、旬の冬場はヘタなマグロよりも旨くなると言われます。身はピンクがかったオレンジ色で、見た目も良いです。マグロに比べ脂が少なく、冷凍しても食感、味共に劣化が少なく色変わりもしないため、鮮度のいい刺身食材として重宝がられます。かつて内陸地区で「刺身といえばマカジキを指した」ハナシは、日本各地に存在します。

最盛期には30[千t/年]近くを誇った漁獲量は、今や2[千t/年]弱まで激減し、かつて大衆魚だったマカジキは高級魚となってしまいました。2016年の漁獲量の多い地域は順に、太平洋南区、宮崎、東シナ海区、高知です。

クロカジキ(黒梶木、黒旗魚、黒舵木、黒皮、Blue Marlin)

クロカジキは、漁獲した直後は藍色ストライプが鮮やかですが、水揚げされる頃には黒っぽく変色します。全世界の熱帯・亜熱帯海域に広く分布しています。沿岸にはあまり近づかない性質で、外洋で小型魚類やイカなどの軟体類を捕食しています。

旬は初夏で、味はマカジキには及びませんが、やはり生食利用が多い魚種です。

2016年の漁獲量の多い地域は順に、太平洋北区、太平洋南区、東シナ海区、太平洋中区です。

メカジキ(女梶木、女旗魚、女舵木、Swordfish)

女性的な体つき故に「女」の字が当てられるメカジキは、東京では「メカ」とも呼ばれます。全世界の海洋に広く分布します。マカジキ科の他のカジキと異なり、腹鰭と鱗がありません。メカジキはカジキの中でも最も大きく成長する種類の一つで、成魚になると全長4 m、体重300 kgを超えます。泳ぐ速さはマグロよりも速く、100km/h程です。非常に獰猛な性格で、船やクジラなどにも突進していくことも珍しくありません。

旬は夏です。マカジキ科と異なり比較的深海に棲息するため、身には脂が乗って乳白色なのが特徴です。加熱調理されることが多く生食利用は少ないようですが、一部回転鮨などでは鮨ネタとして提供されているようです。他のカジキが軒並み漁獲量を下げる中、比較的安定して獲られているメカジキは、最近では、流通するカジキ全体の約6割を占めるようになり、いつしか魚屋で単に「カジキ」と言えばメカジキのことを指すようになってしまいました。

2016年の漁獲量の多い地域は順に、宮城、太平洋中区、太平洋南区、高知、三重です。

【出典】農林水産省 漁業・養殖業生産統計

マカジキは刺身に限る

マカジキ刺身

前述のとおり、冷凍しても食感、味共に劣化が少なく色変わりもしないマカジキは、生食されることが殆どです。クロマグロほど脂は乗っていないもののその脂は仄かに甘く、クセのない爽やかな味わいが特徴です。オレンジ色の身は鮮やかで、もちっとして筋がない食感がマグロとはまた違い、好む向きも多い魚です。

特に旨いのは、狭腹のそでの部分で、脂の乗ったその味わいはマグロのトロを凌ぐとも言われます。しかもマグロのトロより随分とお安いです。

その他、マカジキの料理としては、棒寿司、昆布〆、はらんぼのタタキ、ぬた和えなどありますが、基本生食に準じた食べ方ですね。

脂が均等に混在するメカジキは火を通して旨い

均等に混在する脂に独特の風味があり、また血合いにクセがなく、まったりした旨さがあります。栄養面でも、多価不飽和脂肪酸(DHA、EPA)やカリウム、ビタミンEを豊富に含んだ優良食材です。

特に頭部の筋肉や頬、ハーモニカ(背鰭下の鰭筋の部分)などはシンプルな塩焼でも旨く、珍重されます。

生食もしますが、火を通す調理でほどよく繊維質の身がしまり脂が甘く感じられ、旨いです。定番のムニエル、フライの他、汁(鍋、みそ汁、すまし汁)、煮つけ、トマトソース煮、ホワイトソース煮など。もちろん単純なステーキでも十分いけます。特に、冷凍していない「生」のメカジキは、水っぽくならずとても旨いです。

この麹焼も、見るからに旨そうですね。

コメント

  1. debux2 より:

    胸鰭なしで、どうやって方向転換するのだろう・・・
    それはともかく、メカジキの焼き物はどうやっても美味いっす。

  2. Fish Lovers Japan より:

    debux2さん!
    メカジキの焼き物、旨いですよね。特に生(冷凍していないもの)は。

  3. 目薬 瞳 より:

    マカジキ、食べてみたいです。デパ地下なら買えるでしょうか?

  4. Fish Lovers Japan より:

    目薬瞳さん!
    メカジキはともかく、デパ地下でもマカジキを見かけたことはありませんねぇ。
    築地の大物仲卸(マグロを主に扱っている仲卸のことです)で買うことができますので、ご入用の際はおっしゃってください!

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