鰆と書くからってあなたはサワラのことを春の魚と思ってない?

春の季語ともなっているサワラですが、産卵後の夏場を除き、ほぼ一年中旨い魚です。

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目次

呼び名とその由来

スマートな体形で、「狭い腹(さはら)の魚」が語源と言われています。

春に外海から産卵のために瀬戸内海沿岸に入り込むことから、関西では古くから「はるのさかな(鰆)」と書いたようです。

地方によっても呼び名がそれぞれで、カマチ(壱岐)、グッテリ(香川)、アカキュウベイ(三重・静岡)など。それだけ愛されていた旨い魚だということでしょう。

また、出世魚でもあります。関東では、50cm前後・1kg以下をサゴチと呼び、サワラはそれ以上を差します。また関西では、50cm前後・1kg以下をサゴシ、50~70cm・1~2.5kgをヤナギと呼び、サワラはそれ以上の大物を差します。

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生態と旬

5~6月にかけ、直径1.5~2mmというサバ科の中でも特に大きい卵を産卵します。産卵数は、何と85万粒。卵は、一昼夜ぐらい波間を漂いながら孵化します。プランクトンを食べて秋頃には40㎝ぐらいに成長し、外海へ旅立ちます。以後は2歳で68cm、3歳で78cm、4歳で84cmほどになります。成長は温暖な時期だけで、冬は成長しません。寿命はオス6年、メス8年ほどです。

関西では、「春鰆」「桜鰆」と呼ばれる春のサワラが好まれます。一方関東では、脂ののった秋~冬の「寒鰆」が好まれますので、旬は土地それぞれといっていいでしょう。ただ、「はるのさかな」のイメージだけで他の季節のサワラを敬遠するのは、もったいないと思います。

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産地

かつて「サワラの値段は岡山人が決める」と言われるほど瀬戸内での水揚げが多かったのですが、最近では広い地域で獲れています。実際サワラは回遊魚で、北海道南部からオーストラリアにかけての分布が確認されており、全国で水揚げされます。

2015年の統計では、国内水揚げは計2万t。多い順に、福井県、石川県、京都府、島根県、長崎県となっています。一時期国内漁獲高が1万tを割り込みましたが、種苗放流などの資源確保のための努力と日本近海の水温上昇により、国内漁獲高は緩やかな上昇傾向にあります。

近年では、「銀サワラ」、「白サワラ」と呼ばれるオーストラリア東海岸沖及びニュージーランドものや朝鮮半島ものも輸入されています。

漁法

大型定置網、流し網、曳縄釣、延縄釣など様々な方法で漁獲されます。

面白いのは、「鰆網」と言われる独特の獲り方です。サワラの魚群を数隻の船で追い掛け、疲れた頃を見計らって一隻が魚群の先頭に出て石を海中に投げ、サワラが逆転して逃げるところを旋網で漁獲する、というユニークなものです。

サワラの旨さの秘密

サワラは、身は白いものの、スズキ目サバ科に属すサバの仲間で、いわゆる「赤身魚」に分類されます。

「白身魚」とは同じ地域で一生過ごす魚のことで、一般的に白い身が固く淡白な味わいが特徴です。一方サワラは、猛スピードで長距離を一生泳ぎ続ける回遊魚で、身は軟らかく味が濃厚です。身の水分が70%と多く(ちなみにサバは65%)、軟らかで身割れしやすい肉質が特徴です。

含有成分としては、窒素量がタイやヒラメに匹敵するくらいに多く、アミノ酸の中のヒスチジンもサバと同じくらい多く含まれます。タウリンはタイよりも多いです。イノシン酸やカルノシン、カルニチンなど、コクの素になる物質も多く含まれています。

特に「寒鰆」は、餌がサンマやイワシのためかEPAやDHAが非常に多く、DHAはサンマより多いのです。また脂肪が14~16%に達し、インドマグロの様にトロリとした食感を味わう事が出来ます。

食べ方

昔から、卵巣は美味とされてきました。本朝食鑑には

鰆は子が多く、胞(はらこ)は刀豆のサヤのようである。乾燥すると中華の墨の古いものに似ているので唐墨と名づける。これを切るとツヤあり味も甘味である

と記されていて、これがカラスミの語源だと言われています(カラスミといえば現在ではボラの卵巣で作りますが、サワラの卵巣を使ったカラスミが江戸時代の長崎に伝来し、その後ボラの卵巣を使ったものが考案されたという説です)。TVドラマみをつくし料理帖の最終回「寒鰆の昆布締め」でも、サワラで作る当時のカラスミが紹介されていました。今でも、サワラでカラスミをつくる地域はあるようです。

また身は、塩焼き、幽庵焼き、味噌漬け、西京漬け、干し物など焼き物のほか、フライパンの照り焼き、ムニエルなどのソテー、フライ、竜田揚げなどの揚げ物、かぶら蒸などの蒸し物、煮付け、炊き込みご飯など、非常に幅広く調理されます。

しかし何と言っても絶品なのが、刺身や、皮目を炙った「焼霜造り」などの生食です。瀬戸内には「鰆の刺身は皿までなめる」という俗諺もあるぐらい、その旨みは産地では知られていました。

皮をつけたまま造りにするのは、皮と身の間の旨みを生かすためと、やわらかい身肉のためです。

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ともかくやわらかく身割れし易いため、活〆や神経〆などの技術があっても高鮮度を保って流通するのが難しく、生食は主に地産地消のようです。

産地で食べるサワラの刺身を、「刺身の王様」とまで絶賛する人もいます。

サワラが2016年美味しい魚ランキング総合1位待ったなしな件について

この脂はいったい何者だろう。舌の上にぱぁっと広がって脂の甘みをもたらし、その直後にすっと流れて行ってしまう。しつこさは全くなく、魚の脂の魅力的な要素だけを凝縮したような極上品だ。

あなたは本当のサワラを知っているか

舌の上で溶けるように広がる脂には一瞬で舌に記憶を植えつけるほどの旨味と、マグロより弱く爽やかな酸味があり、青魚特有の香りの良さを残しつつ、嫌な青臭さは全くない。

しかしながら、最近では豊洲でも多く扱うようになり、全国区になったサワラ。
機会があれば、是非、生で召し上がってみてください!

コメント

  1. debux2 より:

    う~む・・・
    鰆について、何も知らなかった自分を発見しました・・・
    カラスミも・・・
    やられた感、バリバリ・・・っす

  2. souxouquit より:

    debux2さん!
    そうですね。調べてみると私も知らないこと多かったです。
    特に、刺身は是非食べてみたい!!

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