そもそも、パンダやトキと同じ絶滅危惧種をスーパーで大量販売している状況は、異常です。
原因はいろいろあると思いますが、消費者の無知が作り出している面も、否定できません。
「一の丑」の日に土用の丑の日はウナギの旬でも何でもないという記事をアップしたばかりですが、反響も大きく、また、調べているうちに大変な事実も判ってきたので、こりゃ来年の夏まで待てない!と思い立ちました。
週末にやってくる「二の丑」に向かい、駆け込み需要喚起に躍起になっているスーパーの喧騒などを憂い、再びの緊急提言です。
2014年11月現在の国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストの掲載状況
【出典】水産庁 ウナギをめぐる状況と対策について
目次
夏の土用の丑をターゲットに半年前から蠢く闇
夏の「土用の丑の日」までに出荷サイズに育つシラスを求め、台湾で稚魚を買い付け、香港経由で合法輸入するトンでもない手口が横行しているようです。以下に二つの記事を引用します。
追跡「うなぎ」のアジア闇ルート(NHK 特集 2016年12月)
1キロ300万円ほどに上ることもある、日本人が大好きな「白いダイヤ」ウナギ。背景には、ウナギの激減に加え、稚魚をめぐる「不透明な国際取引」があります。
日本で育つウナギの稚魚=シラスウナギのおよそ半分が外国産です。値段の高騰に拍車をかけているのが、日本が2006年までほとんどを輸入していた台湾の動きです。証言から見えてきたのは、台湾、中国大陸、香港を経由して日本に至るルート。台湾から日本へ輸出すれば「密輸」ですが、輸出規制のない香港を経由させることで合法的な香港からの輸出品として運ぶ、いわば「ロンダリング」のからくりがあったのです。
日本の消費者が『国産ウナギ』を好むため、稚魚で輸入し、日本の養殖場で育て『国産』にします。養殖には最短でも半年かかるため、ウナギ消費が集中する夏の『土用の丑の日』に出荷を間に合わせる事情から、1月上旬までに稚魚を仕入れなければなりません。しかし日本では、1月上旬までにはシラスウナギが十分に獲れないので、11月から12月にかけて獲れる台湾の稚魚を求めるのです。
国内の養殖業者やウナギ店の中には、土用の丑の日に向けて出荷が集中する状況を変えようと、独自の取り組みを始めたところもあります。どうすれば激減するウナギを守れるのか。一人一人が考えることが大切だと思います。
【NHKクローズアップ現代】2016年12月1日 “白いダイヤ“ウナギ密輸ルートを追え!
ウナギ密輸の実態を暴く(WEDGE REPORT 2016年7月)
ウナギの取材を始めると、次から次へと違法行為や不正、業界のコンプライアンス意識の低さなどが明らかになってくる。「今年も土用の丑の日がやってきました。おいしくウナギをいただきましょう」などと言っている場合ではない。
ウナギは、人工孵化から育てた成魚が産卵し、その卵をもとに再び人工孵化を行う「完全養殖」の実用化技術が確立していない。つまり、天然の稚魚(シラス)を捕獲し、養殖の池に入れて育て、出荷するしか方法がない。
日本鰻輸入組合の森山喬司理事長に、台湾から香港を経由して、日本へシラスが入ってくる不透明な取り引きの実態について取材したところ、その事実を認めたうえで、「ただ、これは今に始まったことではない。いわばずっと禁止状態で、同時に日本はずっと輸入している状態だ。今のところ、香港からの輸入は日本政府も認めている」と話す。「台湾では日本よりシラスの漁期が早いことから、夏の〝土用の丑の日〟までに出荷サイズに育つシラスが多く、日本の養鰻業者にとってこのシラスはかなりありがたい存在」と続けた。シラスの価格は日々変動するが、土用の丑の日に間に合う時期のシラスは数年前から1キロ300万円を超すことが常態化しており、これは銀の価格をもしのぐ。
日本のシラス問屋、養鰻業者のみならず、絶滅危惧種を大量販売し続けるスーパーや外食店、資源問題には触れず土用の丑の日の消費を煽るメディア、それぞれに責任はある。残念ながら、消費者もこうした状況をつくりあげている一員である。
水産庁のwebsiteには、シラスウナギの取引価格のトンでもない高騰っぷりが、事実として掲載されています。
【出典】水産庁 ウナギをめぐる状況と対策について
徐々に拡がる「土用の丑の日アンチ鰻」の動き
「土用の丑の日は鰻供養のため休業する」という鰻屋も増えてきています。
また、東京八王子の名店「高瀬」では、「毎年土用の丑の日は休業する」と愛ある休業を決めているようです。
【出典】後藤 隆昭@日曜日東イ24a@ryu_さんのツイートとリツイートのまとめ
そもそも「土用の丑の日」にウナギを食べる積極的理由はない
以前のエントリーでも書いたとおり、「土用の丑にはウナギ」という強迫観念は、仕掛けられた「セールスプロモーションの結果」です。
完全に「敵のペース」なのです。
江戸時代ならいざ知らず、21世紀の現在、夏バテ防止に効果のある食材など、いくらでも存在します。
絶滅危惧種のウナギは、放っておいてもらいたいもんです!
「土用の丑は『う』のつくものを食べる日」としたら皆ハッピーなのではあるまいか
ここは原点に帰り、土用の丑は「う」のつくものを食べよう、ということでいいのではないでしょうか。
ツイッター上で楽しい議論がありましたので紹介します。
【出典】 ウナギ絶滅危機を救うため「土用の丑の日」にウナギを守るウシがかっこいい!
ヨーロッパでは一足早く、ヨーロッパウナギの絶滅でバスク民族の伝統食が途絶えました。
「土用の丑は『う』のつくものを食べる」が元々の風習なので、牛なら…牛ならなんとかしてくれる!
そもそも「『う』の付くものを食べれば夏負けしない」って風習から来てるんだから、今こそ一大アピールをしてしまえば県全体が儲かる上に鰻も救われて、誰も損しない最強の体制が構築出来ると思うんですけどね・・・そう思いませんか、香川県さん
つまり、肉うどんにすればいいってことよ!!!
うさぎにしちゃいます……? うさぎに……w
うさぎさん、早くウナギくんを連れて逃げて!
そこへ颯爽と現れる「ウーロン茶」!
オチャラケてはいますが、絶滅の恐れが少しでも回避できるなら、アリではないでしょうか。
そもそも平賀源内だって、軽いノリでコピーを書いたに違いないのですから。
土用の丑も老害か(あくまで仮説ですが)
少し調べると、またも驚愕の事実に直面しました。
このグラフは、1世帯当たりの鰻蒲焼支出金額の推移を示したものです。
この15年で、支出金額は漸減しています。
逆に、鰻蒲焼の単価は2倍以上に跳ね上がっていますので、「鰻蒲焼消費量」でいうと、1/3程度に激減している、ということになります。
そんな中、もうひとつビックリするようなデータを見つけました。
このグラフは、2016年、単身世帯における、年齢階級別鰻蒲焼支出金額なのですが、驚くことに、鰻は専ら老人が食べていることが明確に判ります。
【出典】総務省統計局 家計調査(家計収支編)結果
これらのデータから推測するに
「土用の丑にはウナギ」と刷り込まれたお年寄りが、その旺盛な消費需要によって、図らずも、シラスの闇取引や乱獲に加担し、拍車をかけてしまっている
という構造なのだと思われます。
頑固なお年寄りなので、国営放送あたりで(ストップ詐欺被害「私は騙されない」バリに)「土用にウナギを食べるな」キャンペーンを張ってもらうことを期待しますが、賢い消費者も事あるごとに「土用にウナギは迷信だ」と啓蒙してあげることが大事です。
「孫子の為にも、ウナギを食す文化を根絶やしにしないでください!」と訴えましょう。
実態を知って絶滅を回避しよう!
どうすれば、絶滅の危機からウナギを守れるのか。
一人一人が知り、そして考えることが大切です。
マスコミも悪いが、踊らされる消費者も悪いです。
根拠のない愚かな思い込みで、私たちの大切な食文化が失われるようなことがあれば、耐えがたいことです。
ウナギを愛しているなら、是非、夏の間はそっとしておきたいものです。
すずきはちなみに、ここ数年土用の丑の日は、香ばしい蒲焼の匂いのが立ち込める中必死に我慢して、牛丼を食べることにしています!
コメント
伴内さんも驚きでしょうね、こんな展開になるとは。
夏場が暇な鰻屋のために考えたキャンペーンが、未来の鰻屋の首を締めちゃうなんて。
落ちる前にスルッと逃げないと!
Sakana_Bossさん!
誰も制御できない「集団ヒステリー」の結果、食文化が失われるとしたら、ものすごく悲しく虚しいことですね。