トンでもないニュースが飛び込んできました。
「豊洲に移転の上 築地に市場機能確保」???
「築地は守る、豊洲を活かす」
東京都の小池知事は、市場の移転問題をめぐり、築地市場を豊洲に移したうえで、将来的にブランド力を生かすため築地に市場機能を持たせた再開発を行うなどとする基本方針を固めました。
呆れました。
ただでさえ迷走している移転に、これ以上の莫大なコストをかけるつもりでしょうか。
八方美人のご機嫌取りも、ここまでくると、流石に突っ込みたくなります。
しかも、都議選公示直前のこのタイミングで、です。
「都民の台所」という耳触りのいい言葉で誤魔化して、その実、政治の道具にしているのは、もはや明らかです。
到底納得がいきません。
目次
迷走した10ヶ月
事実関係はどうなっているんだっけ?という声もあるので、極く簡単に纏めてみました。
- 16/8/31 11月に予定されていた市場の豊洲移転延期を正式発表
この間、豊洲での盛り土未実施問題、有害物質検出などの報道相次ぐ
- 16/11/18 移転時期は最短で2017年冬~2018年春と発表
- 17/1/12 築地市場視察
- 17/2/19 都議会に百条委員会(調査特別委員会)の設置決定
- 17/3/3 石原元知事が記者会見「移転を裁可した責任は認めるが混迷の責任は小池さん」
- 17/3/11~20 石原元知事、浜渦元副知事ら含め21名を百条委員会に召喚するが戦犯特定できず
- 17/3/24 7月の都議選で争点としない方針決定、「市場のあり方戦略本部」の設置指示
この頃から、築地での土壌汚染、衛生問題などの報道が増える
- 17/6/17 築地市場関係者の前で「豊洲を無害化できず」お詫び
- 17/6/20 「豊洲に移転の上、築地を市場機能確保再開発」方針発表
詳細は、以下のリンクを参考にしてください。
豊洲はそもそも安全だったが「おかしな議論」で混乱した
「豊洲新市場は安全性に問題がないのに、小池知事の姿勢が議論を混乱させた」として、リスク論の第一人者、中西準子さんは豊洲移転問題の本質を次のように述べています。
非常に科学的で、リスクとは何なのか、端的に纏められているので、抜粋引用します。
豊洲市場は安全であり、土壌調査にしても、地下水調査にしても、基準値を超えたからといって、即座に危険とはなりません。
東京は長らく首都で、築地、豊洲に限らず工場など様々なことに使われ、戦争や公害もありました。
そんな土地なら、検査をすればなんらかの化学物質は出てくるものです。
基準値は、安全か危険かの二元論で決まるものではないのです。
科学的な合理性を踏まえつつ、科学だけでは割り切れない領域も考慮しながら「安全」を決めていくのです。
小池知事、政治家、報道するメディアの方々がほんとうに『リスク』を理解しているのか、大いに疑問です。
不安という感情を安易に政治に利用してはいけないと私は思うのです。
なによりも大事なのは、ファクトです。
これまで積み上げられてきたファクトからわかることは、これ以上追加の環境対策や検査にいくらお金を費やしたところで、下げられるリスクなんて微々たるものであるということです。
無駄な議論を長引かせてはいけなかったと思うのです。
「豊洲移転白紙撤回」は思いつき、との指摘も
幻冬舎代表取締役社長の見城徹氏は、自身のSNSアカウントで、小池東京都知事を厳しく批判しました。
「豊洲移転白紙撤回」は思いつき発言。
頭に浮かんだことを言葉にする、その間に思考回路という哲学がないですね。一番ひどいのは、何の検証もなく、ムードだけで人気取りのために「豊洲移転中止」を議会に諮ることなく独断で決めたことです。
前任者たちが苦労して粘り強く現実に即して決断、実行して来た「豊洲移転」を、思い付きで中止したのです。豊洲が安全だと言うのは、結論が科学者たちから既に出ていたのです。
地下水の数値や盛り土は、安全に関係ない枝葉末節です。
それをメディアに煽ってやりたかったのは、前任者の不備をことさら声高に言い募った悪者退治のキャンペーンでした。最初から、市場の未来図など何もなかったのです。
前任者たちを貶めることで自分がヒロインになる、スタンドプレーだけがありました。
散々税金を垂れ流して、選挙のために今度は豊洲移転です。
築地に謝罪するパフォーマンスより、豊洲移転を中断したことを、先ずは都民に謝罪すべきです。
思い付きの豊洲移転中止の罪は重大です。
この中の最初から市場の未来図など何もなかったという指摘は、大変残念なことながら、極めて重いです。
このまま行くと政治が市場を殺す
以前のエントリーで、
科学的に「安全だ」とした専門家の意見を軽視し、百条委員会に石原前知事を引っ張り出して悪者に仕立てまで人気を取りたがる「小池劇場」に、正直辟易としていました。
と書きました。そして
しかし最大の問題は、「魚河岸文化」が途絶えてしまうのではないか?ということです。
私たちの日々の食生活と切っても切れない関係にある魚河岸文化が、途絶えず継承されること。
変化することがあっても、移転を契機に、いい意味で「止揚」され、発展していくこと。
これが何より大切なことです。
とも書きました。
今回の迷走は、この「魚河岸文化」を殺すのに十分なインパクトがあるのではないか?と危惧します。
もう、築地も豊洲も要らないよ。生産者と消費者が直接取引できるようなプラットフォームを、別に立ち上げればいいじゃんというムードに向かうような気がしてなりません。
ここでは、小池都知事がいいとか悪いとか、ということを議論しようとは思いません。
そんなことよりも、この迷走が市場を殺す決定打になってしまう、そういう気がします。
都民ファーストと言いながら、市場関係者も、そこで魚介を買い求める魚屋や都民も、誰も幸せではありません。
小池都知事はただのトリックスターであって何れ時間の問題だったのさ、ということなんでしょうか。
具体的な計画策定は、これから都庁の事務方が詰めるとのこと。
この先もこの問題を注視したいと思います。
コメント
IWAXさん!
ホント、分りにくいハナシですよね。
移転をめぐる報道を時系列で纏め、追記しました。少しでも分りやすくなればいいのですが。
例えば「近頃、美味しい魚が食べられない(買えない)」とは消費地側の意見であり、産地では「旬の新鮮な魚」=「美味しい魚」があるのが現実ではないだろうか。
だとすると問題は流通であろう。
「豊洲移転問題」の政治的問題でも、文化的問題でもあるが、「食」の問題としても重要な契機ではなかろうか。
debux2さん!
問題は、市場で働く人々を置き去りにした議論が進んでしまったことです。
その結果、市場機能不要、つまり、美味しい魚を流通させるのに必ずしも問題を孕んでいる市場を経由させる必要がない、という流れを加速させたことは、間違いないですね。
この問題、流通のありかたとしても、今後も注視ですね。