女房を質に入れても初鰹、のぼりガツオは春の旬の味わいの代表

江戸時代の俳句に
目には青葉 山ホトトギス 初鰹
というのがあります。この句は、「初鰹」が如何に人気だったかを物語っています。

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新鮮なものが大好きで「初モノ」には目のなかった江戸っ子は、
「まな板に 小判一枚 初鰹」
「女房を 質に入れても 初鰹」
と言われるほど高価な(一説によると1匹10万円相当だったとか)初鰹を食べるのが、最高の「粋」だったようです。脂の乗った秋の戻りガツオは、「ねこまたぎ」と嫌われました。

ところが上方は真反対で、初鰹には目もくれず、戻りガツオが人気でした。南北に長い日本の「食文化ギャップ」は、面白いですね。

目次

太平洋を回遊するカツオ

カツオは、南の海で生まれ、19~23℃程度の暖かい海を好みます。「遠洋カツオ漁」は、ほぼ一年中(船のメンテナンス期を除く2月~11月にかけ)行われています。早いものだと2月のうちに「初鰹」として魚屋さんに並びますが、一般には日本の沿岸で獲れた「近海モノ」を初鰹と呼ぶことが多いようです。

季節回遊魚であるカツオは、3月~6月にかけて、暖流の黒潮に乗って南西諸島、九州、四国、和歌山、静岡、房総、三陸の近海まで順に北上します。これがいわゆる春の「のぼりガツオ」です。

これに対し、三陸沖~北海道南部沖でUターンし、10月から11月に産卵のため寒流の親潮に乗って南下するカツオを「戻りガツオ」といいます。

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初鰹の産地

初鰹の産地は「黒潮の通り道」、つまり千葉県、愛媛県、高知県、和歌山県などです。

水温の関係で、それぞれの漁の最盛期が少しづつずれるので、カツオの北上に合せて「今はどこどこが旨いだろうな」と想像しながら初鰹を追っかけるのも、実に楽しいものです。

遠洋カツオ漁は静岡などが拠点になっています。焼津のなまり節などは一年中流通しています。

また、鹿児島で水揚げされるカツオは、ほとんどが鰹節などに加工されます。

カツオの栄養

カツオはとても栄養価の高い魚です。

筋肉などを作る蛋白質の含有量は100g中25gを超え、魚の中でもトップクラスです。

必須アミノ酸含有率も高く、この独特の臭みを消すためにネギ、ショウガ、ニンニクなどを使います。タウリン、ビタミン(B1、D)、多価不飽和脂肪酸(EPA、DHA)なども豊富に含まれています。

また、新鮮なカツオには、抗疲労効果や食欲抑制の効果があるカルノシン、アンセリン、ヒスチジンなどが含まれていることも分かりました。

春の訪れを告げる初鰹は、さっぱりしています。それに対して、戻りガツオは濃厚です。味の差は、脂質にあります。生肉可食部100g当りの脂質の量は、春獲りが0.5gなのに対し秋獲りが6.2g。実に12倍もの差があります。

【出典】文部科学省 日本食品標準成分表2015年版

カツオのさまざまな漁

遠洋カツオ漁

冷凍設備、漁獲物や生餌を大量に積み込める船倉、回遊魚を追う航行性能を備えた500tクラスの大型船で、30~80日の長期にわたり操業します。

漁場は南太平洋や北西太平洋などの暖かい海。漁法は、イワシなどの餌をまき、カツオの群れを海面まで浮き上がらせ、一匹一匹釣り上げる「一本釣」です。

釣ったカツオは、船内で急速凍結します。カツオの体温で温度が上がらないように循環させた「ブライン溶液」と呼ばれる-20℃の濃塩水に投入すると、1分でコチコチになります。カツオがヒレを立たせ口を開けているのは、生きたまま凍結された証拠です。その後、8時間かけて芯までしっかり凍結させてから魚槽内のブライン溶液を抜き、-50℃の超低温で保存。鮮度の良さは最高なので、刺身・たたきなど生食用になります。

近海カツオ漁

漁法は、一本釣、曳縄(ひきなわ)漁、巻網(まきあみ)漁と多岐にわたります。操業は長くて5日ほど。最近は、水揚げ後の鮮度を保つ観点から「日戻り漁」が主流です。

一本釣漁

近海では2~3人の小型船でも行っています。

曳縄漁

小型漁船の両端に竿を伸ばし、その竿から複数の釣り糸で擬餌針をたらし、船を走らせながら餌が泳いでいるようにみせて、カツオを1本ずつ釣りあげる漁法です。

巻網漁

カツオの群れの周りを網でまき、かかったカツオを運搬船で取り上げます。

操業当たりの漁獲量が多く効率は良いのですが、網の中で大量のカツオが折り重なって熱がこもり、カツオ同士がぶつかり合って身割れや内出血を生じます。さらに、一度に大量に揚がり処理に時間がかかり冷凍ムラが生じるため、一本釣や曳縄に比べ、魚質の点でバラツキがあります。

鮮度を保つためにも工夫が

カツオは傷みが早いので、産地では様々な工夫をしています。例えば

  • 漁法を「一本釣」もしくは「曳縄」のみに限定する
  • 水揚げ直後には船上での活け締め・血抜き処理を徹底する
  • 時間との勝負なので高性能エンジンを漁船に搭載し、操業を終えたらすぐさま帰港する
  • 港ではシャーベット状に加工された「スラリーアイス」で保管する
  • 個体一匹毎にタグをつけ、品質管理を徹底する

などです。

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如何ですか。

女房を質に入れても、栄養たっぷりの美味しいカツオを食べましょう。

コメント

  1. debux2 より:

    うんうんヽ(´▽`)/
    私はタタキをポン酢+ネギ+ニンニク、ってな流儀でしょうかね・・・

  2. souxouquit より:

    debux2さん!
    初鰹はタタキが旨いですね。私は、酢醤油にネギ(or分葱)とおろし生姜、というスタイルが好きです♪

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