口から溢れるイワガキを生で喰うしあわせは夏の醍醐味

これから旬を迎えるイワガキ。生食が絶品です。

目次

先ずマガキとの違いを認識しよう

牡蠣と呼ばれる仲間の中で最も一般的なのはマガキ(真牡蠣、[英] True Oyster)で、世界でも一番多く食べられています。日本で流通してるマガキは、ほぼ全て養殖もので、広島県、宮城県、岡山県産が多く、また、韓国などからの輸入品も相当量あるようです。

マガキは秋口(September)から入荷し始め、冬に旬を迎え、春(April)に終了します。「Rのつく月は食べられる」と言われるのは、5~8月が産卵期にあたり、味が落ちるからです。

f:id:souxouquit:20170607220942j:plain

【出典】www.yamauchi-f.com

食べ応えたっぷりなイワガキは、夏の味覚の王様

イワガキ(岩牡蠣、[英] Rock Oyster)の名前は、岩につくカキ、あるいは岩のようにゴツゴツした外見に由来するとされています。ほかにクツガキ、シャッパ、ソコガキ、バッカイなどの別名があります。

イワガキの特徴は、先ず何と言っても大型なことです。マガキに比べて2〜3倍、大きなものは、殻長10cm、殻高20cm、重さ1kg近くにもなります。水深15mくらいまでの、岩礁域に付着するように棲息します。潮間帯(ちょうかんたい、潮の満ち引きで海面から出たり海中になったりする場所)に棲息するマガキと違い、敵の多い深水域に棲息するため、殻が非常に厚く、大きくなるのが特徴です。茶色っぽい表面は薄い板状が重なり合っています。形は長楕円形であることが多いですが、付着した岩によって様々です。岩などにくっつく殻が、蓋側の殻よりも大きくなります。

マガキと対照的に、春から秋口まで入荷し、夏が旬です。それゆえ「夏ガキ」とも言われます。

マガキは一度に産卵し、産卵後は栄養分がすっかり抜け「水ガキ」と呼ばれるほど味が著しく落ちます。一方イワガキは数回に分けて産卵するため、長い産卵期間中極端に味が落ちず、栄養を蓄えた産卵期こそが旬、ということになります。

f:id:souxouquit:20170607221011j:plain

今や全国に流通するイワガキ

産地は、古くは日本海側の鳥取、石川、新潟、象潟(山形)、太平洋側の銚子、鹿島灘などでしたが、現在では、秋田、宮城、千葉、茨城、石川、富山、伊勢湾、三河湾、熊野灘、京都、島根、徳島、宮崎など全国に広がってきています。天然のイワガキ自体がブランド化している、といっても過言ではないですが、富山県、岩手県、秋田県、千葉県などが名産地と言われ、「ミネラルを多く含んだ伏流水が流れ込むプランクトン豊富な海」が条件のようです。

また近年では、天然ものだけでなく、隠岐、富山県新湊、岩手県、三重県などで養殖されるようになり、今後が期待されるところです。鮮度保持や流通の技術も上がり、かつて天然ものの地産地消だったイワガキは、今や全国で食べられるポピュラーな食材になりました。

f:id:souxouquit:20170607220959j:plain

イワガキ養殖の草分け「隠岐いわがき」

養殖を始めたのは島根県隠岐海士町(あまちょう)で、「隠岐いわがき」としてブランド化もされています。

隠岐では、長年にわたって採苗と事業化に取り組み、1992年にイワガキの種苗生産を日本で初めて完成させました。2002年には「春香(はるか)」の名でブランド展開を始め、海士町いわがき生産株式会社は2010年、高い安全性と優れた品質に対し「美味しまね認証制度」によって認証されました。

養殖イワガキは2~5年の養殖期間が必要ですが、身が大きく形がよいこと、浄化による安全性が高いことなどから、天然ものと同程度の価格で流通しています。

また、海士町では、従来の凍結技術で損なわれていた鮮度や食感、旨味、色味を保持できるCAS(Cells Alive System)と呼ばれる凍結設備を用い、オフシーズンでも「春香」イワガキを出荷しています。凄ぇ。

f:id:souxouquit:20170607221039j:plain

www.town.ama.shimane.jp

海のミルクの秘密

「海のミルク」と呼ばれる程栄養価の高い食材です。

先ず、動物性食品としては珍しく、炭水化物が多いのが特徴です。しかも、そのほとんどがエネルギーに変りやすいグリコーゲン。疲労回復に効果があり、肝臓にも良いです。

ミネラル類では、亜鉛と銅を非常に多く含んでいます。その他、鉄分、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウムも豊富です。

ビタミン類ではB2、B12を多く含み、胎児の発育に欠かせない葉酸、タウリンも多く含みます。

f:id:souxouquit:20170607221003j:plain

おいしくいただくために押さえるべきポイント

選び方

持ってみて、貝殻から体液が漏れないもの、貝殻がだらしなく口を開けていないものを選びましょう。

調理法

生食

食べ方としては、生が一般的というか、おそらく流通するイワガキのほとんどが、生で食べられているんじゃないでしょうか(当社感覚比)。野趣豊かな磯の香り、独特の苦みと濃厚な旨みに溢れ、まことに涅槃です。

マガキに比べて可食部が大きく、適宜一口大に切り分けないと、女性や子供は困ってしまいます。レモンなどを絞って生食すると、つるっとした食感とともに喉にすべりこみます。柑橘系+タバスコ、酢醤油/ポン酢+もみじおろしも定番ですが、磯の香り至上主義者は、粗塩だけで食べますね。

冷した日本酒でいただくと、もう何も言うことはありません。

蒸しガキ

殻つきのまま蒸し上げると、実に美味です。あまり熱を通しすぎないのがポイント。火を通すことで、濃縮した旨みが楽しめます。焼きガキも同様に旨いです。

カキフライ

身の大きさがバラバラで揃わないのが難点ですが、そんなことどうでもいいですね。大粒のイワガキは、フライにしても実に旨いです。

炊き込みご飯

剥いて適宜に切り、ご飯と炊き込んでも旨いです。秋田県象潟町などでは天然イワガキの炊き込みご飯が名物になっています。

さあ豪快に喰らおうではないか!

f:id:souxouquit:20170607220947j:plain

コメント

  1. debux2 より:

    ポン酢+紅葉おろし派です。薬味で生臭さを消して、クリーミーな旨みを味わうのが好みです。
    「マガキ」という呼称すら知りませんでしたが、個人的には「青い方」と呼んでいる牡蠣にはあまり惹かれません・・・

  2. souxouquit より:

    debux2さん!
    ポン酢+もみじおろし、旨いですよね。マガキよりイワガキが好きという方も多いようですね。

  3. Sakana-Boss より:

    こんちわ。
    子供の頃は、カキフライしかダメだったなー。生臭さが原因でしょうね。でも、酸いも甘いも噛み分ける頃には、生ガキが大好きになってました(^_^)
    ボストンで何度か、クマモトオイスターってブランドの牡蠣を食べましたよ。小粒だけど味が良かったです。
    元々は熊本から稚貝を持って行って定着したそうです。
    逆に熊本では、なくなっちゃったらしいけど、最近になって復活し始めたとか聞きました。
    今度、純クマモトを食べてみる?( ͡° ͜ʖ ͡°)

  4. souxouquit より:

    Sakana-Bossさん!
    私もアメリカで「クマモト」ブランドのオイスター食べました。想像ですが、日本の養殖技術は凄いんではないでしょうか。

コメントを残す