タチウオ(太刀魚)は夏に旨い栄養豊富な白身魚 乱獲で資源枯渇か?

夏の味覚タチウオは、調理し易く、栄養豊富な白身魚。しかし近年漁獲量は激減し、ピーク時の1割程度の水準にまで落ち込みました。

目次

漁獲量激減の原因はハッキリしていないが

国内のタチウオ漁獲量は、近年著しく減少しています。ピーク時には約7万t/年を誇った漁獲量は、2016年では7,100tにまで落ち込みました。

【出典】農林水産省 漁業・養殖業生産統計

この漁獲量激減現象について、「韓国への好調な輸出を背景にした乱獲が原因」との声もあります。

韓国ではタチウオは「カルチ」と呼ばれ、一昔前は安く、日本でいうサバのような「大衆魚」でしたが、最近値段が高騰し高級魚になりました。高い値段で買い取ってくれる韓国への好調な輸出を背景に、漁獲高の減少を理解していてもタチウオ漁を止めない日本の業者が多い、という訳です。

しかしながら、原因の特定には未だ至っていません。この問題、今後も注目していきたいと思います。

銀色に光る太刀魚は立ち泳ぎする

全長1m前後の平たい体で、鱗のない銀色の魚体が特徴的です。生きているときはやや青みがかっていて光沢がありますが、死ぬと灰色がかってきます。尾鰭と腹鰭はなく、背鰭は後頭部から尾の付け根まで途切れることなく続いています。口は大きく、下顎のほうが長く突き出ていて、口内には鋭い歯が並んでいます。普段は蛇のように体をくねらせて泳ぎますが、獲物を狩る時は、頭を上にして立ち泳ぎをします。

体表を覆う銀粉は「グアニン」という物質で、生きているときにはつねに新しい層が生成されて体表を保護します。このグアニンから採取した銀粉は、かつて模造真珠やマニキュア、ラメなどの原料として使われていました。

岸近くの浅場から100m前後までの砂泥底に、群れで棲息しています。日中は深場にいますが、夜になるとエサを求めて表層まで浮上します。主なエサは小魚、甲殻類、アミ類など、肉食です。

通常は3歳で成熟し、体長70cm~1mになります。寿命は6~8年程度とされています。産卵期は6~10月で、旬は7~11月頃までと長いですが、夏に安定して脂がのるので、一般には夏の魚と言われます。

白身の旨さを様々な料理で味わいたい

タチウオの骨は軟らかく、体表には鱗はなく、グアニンも無味無臭なので、調理は比較的楽です。白身の旨い魚で、ビタミンD、ナイアシン、多価不飽和脂肪酸のEPA、DHAなどの栄養も豊富です。

やや水っぽく、繊維質が少ないのが特徴です。熱を通すと適度に締まり身離れがいいので、煮込み系より、焼く、揚げるなどの料理に向きます。生食(刺身、焼霜造り、背ごし、なめろう、たたき) 、焼き物(塩焼き、醤油焼き、西京漬け、幽庵焼き)、揚げ物(天麩羅、フライ、唐揚げ)、汁(潮汁、みそ汁)、ソテー(ムニエル)など、食べ方は様々です。

刺身

タチウオの旨みは皮にありますので、銀皮を生かして刺身を引くのがいいです。3枚に卸したタチウオを、薄く造ります。身には甘みがあり、食感もほどよく、旨いです。

焼霜造り

皮目を炙って、冷凍庫などで急速に冷やします。水っぽくなるのを避けるため氷水を使わないこと、あまり冷やしすぎないことがコツです。炙ることで脆い皮がしっかりするとともに、香ばしい皮目の旨さが引き立ちます。甘味と旨みが刺身より一段と増します。

背ごし

背鰭を取った小振りのタチウオを、3枚に卸さず、出来るだけ薄く切り落とします。中骨が気にならないくらいの厚みに切るのがコツです。骨が固い場合は、酢に漬け込んで骨を軟らかくします。これを、酢みそ、山葵醤油、ポン酢などで食べます。

なめろう(みそたたき)

3枚に卸したタチウオを小さく切り、味噌、葱、茗荷や生姜の搾り汁などと和え、よく切れる包丁でたたきます。好みで玉葱や大蒜を入れても旨いです。

塩焼き

タチウオ料理の基本と言っていいでしょう。切り身のタチウオに振り塩をして1時間以上置き、これをじっくりと弱火で焼き上げます。内側から染み出す脂で皮目が揚げたようになり香ばしく、身に甘みがあってとても旨いです。酒のつまみにも、ごはんのおかずにも最適です。

醤油焼き

塩焼きの応用編です。切身の、または3枚に卸したタチウオを、先ずは素焼きにします。焼き上がりに味醂、醤油を半割にしたタレを塗りながら、蒲焼風に仕上げます。醤油の旨みと香ばしさで、また違った味わいです。山椒がとても合います。

天麩羅

小振りのタチウオは、3枚に卸してそのまま天麩羅にしてしまいましょう。皮の旨みと身の甘みをストレートに味わうことができます。

フライ

天麩羅も旨いのですが、大ぶりのタチウオは、もうひと手間かけてフライに挑戦しましょう。3枚に卸したタチウオを、梅肉を芯にして1回転半くらい巻ける程度の長さにカットし、巻いたら爪楊枝で止めます。天麩羅粉を水で溶いて衣を作り、巻いたタチウオ全体に付け、更にパン粉を付けて油で揚げます。梅肉を使う代わりに、チーズ+大葉の組み合わせでもイケます。さくっとしたパン粉の中がしっとりとジューシーに仕上がり、身の甘みがとても旨い一品の出来上がりです。

潮汁

刺身などにした後のアラや胃袋などの内臓を、湯に通して冷水に落とします。滑りを流し、水分をよく切って、これを昆布出汁で煮て酒、塩で味つけします。それだけでも十分旨いのですが、タチウオの切り身を結んで碗種にすると、大変結構なお吸いものの出来上がりです。

ムニエル

3枚に卸したタチウオを、大ぶりのものは適宜切り、小ぶりのものは数枚合わせて一枚にします。塩・胡椒して小麦粉をまぶし、バターでソテーします。タチウオの癖のない旨みとバターのコクが非常に相性がいいです。

コメント

  1. debux2 より:

    皮目を炙った太刀魚を酢味噌で食べていましたが、邪道?
    塩焼きを冷蔵庫で冷やしたものも好きですが、邪道?

  2. Fish Lovers Japan より:

    debux2さん!
    ご紹介したのは、例えば初めての方に「こういう食べ方が一般的ですよ」とお勧めする「ガイド」みたいなものですから、お気になさらなず、ご本人が美味しいと思う食べ方でいいと思います。
    ところで、酢味噌も旨そうですね。タチウオは確かに冷めても旨いですから、冷蔵庫で冷やすのもアリですね。

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