秋に旬を迎える海の幸は、なんといってもサンマ(秋刀魚)です。
古来より、落語のネタになったり、日本各地でサンマ祭りが行われたり、まさに日本の「秋の味覚」の代表ですが、近年漁獲量が激減しています。
目次
ここ数年は過去40年で最低レベルの大不漁
近年のサンマ漁獲量の落ち込みは、凄まじいです。2015年と2016年は10万t/年あまりで、過去40年で最低レベルでした。今年もこれまで、各地の大不漁が伝えられています。
地域別にみると、ダントツで北海道(漁獲量の半分以上)、次いで宮城県、岩手県と、東北の太平洋沿岸での水揚げが多いです。
ところで、サンマの深刻な不漁は全国の「サンマ祭」にも影響を及ぼしています。
毎年「目黒のさんま祭」は、気仙沼で前日に水揚げされた5,000匹の新鮮なサンマを炭火で焼いて振舞いますが、今年(9月17日に開催)は、昨年の冷凍モノを使うという苦渋の決断をしました。冷凍モノの提供は、22年の歴史上初めてなのだそうです。
中止を余儀なくされた祭もあります。地元の気仙沼市は、9月に開催予定だった「海の市サンマまつり」を、いったん延期の上最終的に中止しました。
こういうニュースは悲しいですね。
【出典】農林水産省 漁業・養殖業生産統計
走りは7月から、脂が乗る旬は秋
7月中旬、道東沖で小型船限定のサンマ漁が始まります。この時期は値段も超お高く、卸価格でも1匹1,000円超です(銀座の料理屋で1匹2,500円の塩焼サンマを食べた経験があります)。8月半ばに漁が全面解禁されると、値段は1匹100円程度まで一気に下落します。
サンマがいちばん旨いのは、10~11月です。北海道東沖に上ったサンマがたっぷり脂を蓄えて南下し、三陸、女川、銚子などで水揚げされるモノが旨いとされています。この頃になると、値段は1匹100円以下まで下がります。今年はマダマダ高いけど。
サンマの鱗は何故ワタの中に?
生きて泳いでいるサンマには、綺麗な鱗がついています。ところがサンマのウロコは薄く、漁獲時に網の中でサンマ同士が擦れあって剥がれてしまいます。特にその傾向は、一度に大量に水揚げする「棒受け網漁」において顕著で、この漁で獲られたサンマには鱗はほとんどありません。
ところで、サンマのワタを食べていると鱗が気になることがありますが、これは実は、漁獲時に剥がれて飲んでしまった自分自身の鱗です。「棒受け網漁」は7~8月の「刺し網漁」より後に始まりますから、鱗に注意するのは、端的に言って、秋に出まわる安くなったサンマ、ということになります。
まっすぐに立つ旨いサンマ、そして黄色いサンマの謎
旨いサンマは、以下で判ると言われます。
- 尾を持ちサンマの頭を上に向けたとき体が曲がらずにまっすぐに立つもの
- エラが赤々と鮮やかなもの
だがしかし。スーパーなどで触る訳にいかない場合もあるでしょうから、見た目のチェックポイントも書いておきます。
- 目が黒々と澄み、胴体に幅があり太っているもの
- 魚体の背が黒く、腹は銀色に輝き艶やかなもの
- 首の付け根がこんもりと盛り上っているもの
- クチバシの先端、突き出した下顎が黄色いもの
旨いサンマは口先だけでなく尾も黄色く、極まれに、全身が黄色のサンマも獲れるということです。そういう個体は高値で取り引きされますが、サンマが黄色くなる理由は未だ謎です。
栄養豊富なサンマを飽きるほど食べたい
サンマには、多価不飽和脂肪酸(DHA・EPA)が豊富に含まれており、また内臓にはレチノールという美容成分が豊富に含まれていたり、栄養価が高いです。
生食
生鮮輸送技術の発達した今ではすっかりお馴染みですが、1990年代初めまでは、水揚げ港付近だけの贅沢料理でした。生姜醤油でいただきます。
サンマの内臓には、ラジノリンクスという小さく赤いミミズのような寄生虫が居ることがありますが、人体には無害です。同様に、サンマヒジキムシという寄生虫も無害。寧ろ怖いのはアニサキスで、生食の際は十分注意が必要です。以前の記事も参考にしてください。
塩焼
サンマは、買ってくる時にはほとんど鱗が落ちていて、内臓やえらの処理も要りませんし、火を通しても身が固くなりません。サンマの塩焼は、誰でもできる定番料理と言えます。
しかし上手く焼くには、少しコツがあります。先ず両面に塩を振り、手でなじませて15~20分くらい置きます。浮いてきた水分を拭き、中~強火で、何度もひっくり返さず、基本一気に焼き上げます。自身の脂で外は揚がったようにカリカリになり、中はふっくらしているのが焼き上がりタイミングです。焼きすぎると焦げるし、脂が落ちてパサパサになるので注意しましょう。
サンマは餌を食べてから排出する時間が30分程度と短いため、内臓に独特のクセはあるもののえぐみは少なく、ワタごと食べる人も多いです。お好みでカボス、スダチ、柚子、レモン、ライムなどの柑橘類を搾り、大根おろしを添え、醤油、ポン酢などでいただきます。
なます・なめろう
脂の乗ったサンマは確かに旨いですが、サッパリと食べたい時もありますよね。三枚に卸したサンマを細かく切り、白髪葱と和えれば「なます」の出来上り。酢みそでいただきます。
血合い骨をそのままに細かく切り、葱、茗荷などと合わせて味噌とたたいくと「なめろう」です。酢をかけて食べても、サッパリして結構です。
つみれ汁
サンマの身をたたいて、片栗粉、山芋、塩を加え、つみれを作ります。昆布出汁と一緒に煮て、酒と塩で味を調え、白髪葱を添えます。
フライ・天麩羅
開いてフライにしても、アジよりも味が強く、中々旨いです。
また、沖縄や長崎では、砂糖や塩で味つけした衣をつけ、天麩羅にしたりもします。
山椒煮
そのまま焼くだけでは、面白くありません。山椒煮も大変結構だという記事を見つけました! それに簡単で、酒のアテに最高の一品です。
生サンマをぶつ切りにします。内臓を出したり捌いたりする面倒は、一切ありません。酒3+水2+味醂1+醤油1+砂糖少々を鍋に入れ、沸騰したらぶつ切りサンマを投入し、粉山椒を加え、アクを適当にすくいながら12~13分煮詰めるだけ。ワタの旨味が味に深みを与えると共に、山椒のおかげで臭みも気になりません。濃いめの味付けなので、1ヶ月程冷凍で持ちます。
もし圧力鍋があるなら、茹でるひと手間を最初に加えるだけで、頭も尾も骨も丸ごと食べられるようになります。
蒲焼き
三枚に卸したサンマに小麦粉をまぶして、油で焼きます。一度取り出して余分な油を捨て、ここに味醂、酒、醤油、砂糖を加えて煮立たせます。液に粘りが出てきたら、サンマを戻し、搦めて出来上がりです。ご飯がすすむ一品です。
炊き込みご飯
内蔵と細かい鱗をとり、醤油につけ込んでから、ご飯と炊き合わせます。味付けは塩と酒のみ。脂と濃厚な旨さがお米と絡み、思ったよりもイケます。
一日も早く「豊漁!」の朗報を聞きたいものです。
コメント
追いかけるほど秋刀魚好きではないとは言え、秋の風物詩がなくなっていくのは寂しいことです・・・
debux2さん!
孫や子供に「秋刀魚は目黒に限る」って、バカじゃないのあはは。と言えなくなっちゃうと思うと、堪らない気持ちになります。
[…] そこで調べてみたわけです。それ以前がどうであるかを。。。簡単にわかりましたよ。例えば、記録的不漁にあえぐ日本の「秋の味覚」サンマ、高値品薄で祭も中止にありました。こんなんです。 […]