イクラの値段が、大変なことになっています。バブル期以来30年ぶりとも言われるこの異常な高値、原因は何処にあるのでしょうか。
目次
イクラの異常な高値の報道
イクラ、いくら? 30年ぶり高値、北海道不漁で在庫減
2017/6/27 日本経済新聞 夕刊
イクラが高騰している。北海道の秋サケの不漁で国内在庫が減少。東京や大阪の卸値は昨年秋から右肩上がりで、前年同期と比べ3~4割高い。「バブル期以来30年ぶりの高値」(築地の卸大手)との声もある。
築地市場(東京・中央)の卸値は現在、塩漬けが1キロ7500~8千円、しょうゆ漬けが6500~7千円前後。イクラは国産が7割を占め、ほとんどが北海道産だ。秋サケの漁獲量が年々減り、築地のイクラの入荷量は10年前から半減した。同じ魚卵のタラコに比べるとイクラは5倍高い。1990年代前半は同水準になる場面もあった。
北海道は近年、サンマやスルメイカが不漁だ。塩辛や干物の現地の加工メーカーは工場の稼働率低下が深刻。「塩辛を減産した分、イクラで稼がなければ」(道南の水産加工会社)と利益率の高いイクラに活路を見いだすメーカーが増え、原料価格を押し上げている。
鮮魚大手の魚力の小売価格は100グラム1190円前後と、前年同期と比べ2割高い。容量を減らし「3ケタの値段で提供できるよう工夫している」(同社)。卸会社は割安な海外産の輸入量を増やすことも検討している。
イクラ バブル期以来の高値に
2017/9/17 NHK北海道
秋の味覚の代表ともいえる秋サケ。ことしは、記録的な不漁となった去年をさらに下回る厳しい状態が続いています。こうした状況は、私たちの台所にも影響を及ぼし始めています。水産の現場では何が起きていて、なぜ不漁が続くのでしょうか。
10月中旬。例年であれば秋サケ漁の最盛期で船の底にはあふれるほどサケがあるはずですが、ことしはガラガラです。漁業者は「商売にならない。去年も悪かったけど去年より悪い。だんだん悪くなってきている」と話しています。サケの漁獲量は平成8年をピークに全国的に減少傾向で、去年は36年ぶりに10万トンを割り込みました。この影響を最も受けているのが、サケの卵・イクラです。100グラム1200円と去年の1・5倍で売られている店もあります。買い物客は「やっぱり庶民としては高いですよね、なかなか手が出ない」とか「安いともうちょっと買うんですけど、今年は買いづらい」などと話しています。イクラの取り引き価格は現在、1キロ5800円。これだけの高値は、バブル崩壊直後の平成5年以来、24年ぶりです。かき入れ時の年末商戦を前に、店側は大きな不安を抱いています。店主の柿田英樹さんは「イクラのニーズが高くなる時期なのでその時期高くなってしまうと売り上げに絶対響いてくるので今からこわいです」と話しています。
売り上げの8割をイクラが占める工場では、地元だけではサケが足りないため、130キロ以上離れたオホーツク海側の斜里町など各地からサケを集めるため、輸送コストが収益を圧迫しているといいます。阿部英晃社長は「これだけ量が少ないですから。原料確保というのを優先でやっていますが目の前の近場と遠くから運んでくるのだと、運賃も変わってくるので、運賃格差も重荷にはなっています」と話しています。
なぜ不漁が続くのか。サケの生態に詳しい専門家は、気候変動に伴ってサケの数そのものが少ない時期に入っている可能性があると指摘します。北海道大学国際連携機構の帰山雅秀特任教授は「1920年まではサケが少なくて、その後40年代中頃まで増えて、また減っている。70年代以降急激に増えて、それが2000年以降に減ってきているという傾向があります。長期的気候変動とサケの回帰量はリンクしているということがよくわかります」と話しています。こうした状態がいつまで続くのかについて、帰山特任教授は「今が底だと思いたいですけど、そこは本当に予測が付きません。はっきりいうと漁業にとっては今我慢の時期だと思います」と話しています。そのうえで、当面、漁の少ない状態が続くことも想定して、長期的にサケをとり続けられるよう、環境保護に地道に取り組むことが重要だと指摘します。帰山特任教授は「漁業というのは自然との共存との中で営まれているといいます。今取れないからと言って少ない魚をいっぱい取るとか、そういうことは是非避けたいです。サケが産卵できる川をどう守り、あるいは作っていくことが大事かと思います」と話しています。
道立総合研究機構さけます・内水面水産試験場では、漁の後半となる年末にかけても北海道の沿岸に近づくサケの数は、少ない状態が続くとみられるとしています。
イクラの値上げ相次ぐ 秋サケ不漁の影響
2017/9/18 NHK
北海道での秋サケの不漁の影響で、東京・築地の海産物を扱う業者の間では、需要の高まる年末年始を前にイクラを値上げする動きが相次いでいます。
このうち、東京・築地で海産物を飲食店や一般の消費者向けに販売している業者は、今シーズン水揚げされた北海道産の秋サケからとれたイクラの仕入れ価格が、去年のおよそ2倍に高騰しているということです。これを受けて、税抜きで5500円で販売しているイクラのしょうゆ漬け500グラムを、来月からおよそ1.8倍の9800円に値上げすることを決めました。この業者では、去年も不漁の影響で500円値上げしたということですが、2倍近く値上げするのは過去に例がないということです。
また、イクラはこれから年末年始に向けて、お歳暮やおせち料理などの需要の高まりますが、不漁の影響で北海道産のイクラを十分に確保できないおそれも出てきているということです。
このため、この業者は来月から、大正13年の創業以来初めて、アメリカやロシアなど外国産のイクラも取り扱うことにしました。北田水産の西川里絵子店長は、「イクラの仕入れ価格がここまで高騰するのは初めてで、キャビアのような高級品になりつつある。買い物客が価格に驚いて買いづらくならないか不安です」と話していました。
白・紅・銀 サケの種類まとめ
不漁の原因を探る前に、先ずサケの種類をおさらいしましょう。以下の4種は、是非覚えておいてください。それだけで買い物が賢く、楽しくなります。
シロザケ(秋鮭、秋味)
産卵期の秋に漁獲します。主な漁場は北海道の河川域です。卵は、サケマスの中で最も旨いとされています(というより、日本人の口に入る筋子やイクラは、全てシロザケと思っていいです)。身は、焼き物、フレーク、新巻鮭などにも加工されます。国内のサケ漁獲量の7割を占め、一部は輸出されます。
【写真】シロザケの卵から作ったイクラ!
ベニザケ(紅鮭)
名前のとおり、身が見事な紅色をしています。回遊するベニザケは、養殖ができません。回遊のおかげで身が引き締まり旨味が濃厚で、脂ノリは強くありませんが、身としては最高に旨いサケです。主に焼き物、スモーク、フレークなどに用いられます。漁場はカムチャッカ半島~アリューシャン列島の辺りで、北海道でも水揚げされますが、ロシアやアメリカ合衆国で水揚げされたものも多く輸入されます。
【写真】旨そうなベニザケの塩焼!
ギンザケ(銀鮭)
ほとんど養殖です。ギンザケ養殖は日本では衰退しましたが、日本の技術を移植した南米チリで発展し、今や輸入サケマスの60~70%、全流通量の40%程度に当たる量がチリ産のギンザケです。これは国産の全サケマスにも匹敵する量です。塩鮭、切り身、コンビニおにぎりの具などによく用いられます。
【写真】太平洋サケの刺身
大西洋サケ(アトランティックサーモン)
鮨屋で「トロサーモン」と謳われているサケで、生食で消費される他、スモークや焼物でも消費されます。日本では獲れないので、100%輸入です。そのうちノルウェー産が約9割と圧倒的で、ほとんどが空輸されます。
【写真】サケの親子丼(と言っても、親は太平洋サケ、子はシロザケ)
サケマス養殖の歴史などは、以前の記事も参考にご覧ください
悲しいニュースを裏付けるデータ
残念なことに、イクラ高騰のニュースは、データでも裏付けられています。
サケ類の漁獲量は1996年をピークに減少傾向
近年のサケ類の漁獲量は、激減しています。1996年の約30万t/年をピークに減少傾向が続き、去年2015年は36年ぶりに10万t/年を割り込みました。日本で漁獲されるサケ類のうちシロザケは70%を占めますから、原料(親)自体の漁獲の落ち込みが、イクラ高騰の原因のひとつと見ていいと思います。
シロザケの来遊は平成になってから最低レベル
また、北海道立総合研究機構によると、シロザケは平年4,000万尾前後、多い年には6,000万尾も来遊しますが、2016年は2,579万尾でした。これは平成になってからもっとも少ない来遊数ですが、今年は更に下回り、2,500万尾を割り込むと予想しています。
【出典】地方独立行政法人 北海道立総合研究機構 北海道の秋サケの資源状況
イクラ高騰の原因は稚魚の成長不全が原因か?
いろいろ取り沙汰されていますが、イクラがここまで値を上げた原因についてはよく判っていません。ここでは代表的な見方、つまり「稚魚が成長する海域の水温が適温でなかったから」説を紹介します。
シロザケは、生まれた川に遡上して産卵することが知られていて、その習性を利用して漁獲されます。生まれて川に戻るまでの期間は4~5年で、それぞれ「4年魚」「5年魚」と呼びますが、今年は2012年生まれの5年魚と2013年生まれの4年魚稚魚が返ってくる、ということになります。
シロザケの漁獲量は、昨年2016年も少なかったのですが、この時は4年魚が少なかったことが判っており、今年戻るはずの5年魚の量は期待できません。また、2013年のオホーツク海の水温は、5月は低く、6月は逆に高かったなど不順で、その影響で4年魚も少ないのではないか、と見られています。
美味しいイクラ醤油漬けに挑戦しよう!
いくら何でもイクラが高い! しかしどうにかしていくらかは喰いたい! と思う向きも多いでしょう。であれば、生筋子を自宅で醤油漬けにしてみるのは如何でしょうか。
ピンポンイクラを避けるポイント
イクラを噛むと逃げちゃうこと、ありますよね。この皮の固いものを、俗にピンポンイクラと言います。
生筋子は、粒が小さく柔らかいものから、秋が深まるにつれ、粒が大きく皮が硬くなります。11月ともなると明らかに硬くなるので、値段は張りますが、10月いっぱいに買うのがお勧めです。オレンジ色の、ドリップが出ていないものを選びましょう。
筋子をほぐす過程で真水に触れるとピンポン化するので、海水かそれ以上の濃度の塩水を使います。温度も大事で、湯は40~50℃が適温です。60℃以上だと、やはり皮が硬くなります。あまり低温だと、脂が固まりますし、汚れや皮が取れにくいです。
また、醤油に漬けすぎてもイクラはピンポン化します。味が沁みればいいので、数時間漬けたら直ぐに小分けにし、冷凍します。半年程度は十分冷凍で保管できます。解凍後は4~5日で食べきりましょう。
漬ける出汁も、この際作ったら如何でしょうか。醤油、酒、味醂、昆布で簡単にできます。
何とか工夫して、美味しいイクラを食べたいものですね!
弊社ショップネットの魚屋にて、北海道産イクラ醤油漬けがお求めいただけます!