最近は関東でも出回る超旨い高級魚ハタ(羽太)類のまとめ

暖かい海に棲息し関東以北では馴染みが薄いハタですが、もう絶品に旨いのです。高級魚ながら最近は時々安く出回るので、覚えていて損はありません。

【写真】博多の名店 相撲茶屋 大塚 の鍋用クエ切身

目次

ハタとは26 属200 種から成るハタ亜科の仲間の総称

ハタ(羽太)はスズキ目 ハタ科 ハタ亜科の総称で、26 属、約200 種から成ります。日本近海で漁獲されるハタの仲間は、代表的なものを属別に列挙すると、ざっとこんなに居ます。

  • マハタ属:マハタ、アオハタ、アカハタ、アカハタモドキ、アカマダラハタ、イヤゴハタ、オオスジハタ、カケハシハタ、カスリハタ、カンモンハタ、キジハタ、キテンハタ、キビレハタ、クエ、コモンハタ、シモフリハタ、シロブチハタ、タマカイ、チャイロマルハタ、ツチホゼリ、ナミハタ、ノミノクチ、ハクテンハタ、ヒレグロハタ、ホウキハタ、ホウセキハタ、ホウセキハタモドキ、マダラハタ、マハタモドキ、モヨウハタ、ヤイトハタ
  • ユカタハタ属:ユカタハタ、アオノメハタ、アザハタ、コクハンハタ、シマハタ、ニジハタ、ヤミハタ
  • スジアラ属:スジアラ、コクハンアラ
  • バラハタ属:バラハタ、オジロバラハタ
  • その他:タテスジハタ(タテスジハタ属)、トビハタ(トビハタ属)、ヤマブキハタ(ヤマブキハタ属)、ルリハタ(ルリハタ属)など

このうち、築地あたりで主に流通しているのは、マハタ、アオハタ、アカハタ、アカハタモドキ、キジハタ、チャイロマルハタなど、何れもマハタ属です。なお、超高級で希少魚のクエや、水族館でよくお目にかかるタマカイも、マハタ属の仲間です。

マハタ属以外で押さえておくべきはスジアラ属で、九州、沖縄などではよく揚がります。

ハタ迷惑な「紛らわしい呼称」の数々

ハタ類には、多くの地方名があります。関東は標準和名と同じ「ハタ」ですが、奄美大島で「ねぃばり」、与論島で「にーばい」、沖縄本島で「みーばい」と呼びます。これらは「目張り(目が飛び出ている)」のバリエーションです。また、中部・紀伊半島などでは「ます」、九州では「あら(魚へんに荒と書く)」と呼びます。ところが、マス(鱒)[サケ目 サケ科]、アラ[スズキ目 ハタ亜科 アラ属]という別種の魚が存在するので、しばしば混乱を引き起こします。

また、個別魚種でも、この手の混乱は起こります。

キジハタは、関西では「あこう(茂魚、赤魚)」と呼ばれますが、関東で「めぬけ」とも呼ばれるアコウダイ[カサゴ目 フサカサゴ科、]も、単に「あこう」と呼ばれることの多い魚です。築地ではキジハタを「あずきはた」と呼びますが、標準和名アズキハタは、稀にしか入荷しないものの別種で存在します。また、築地では標準和名ホウキハタを「きじはた」と呼んだりもします。

アオハタは全然青くなくて寧ろ黄色で、地方によっては「きはた」と呼ばれます。

全く紛らわしい!

性転換して最大2mまで美しく成長し、そして旨い

ハタは熱帯から温帯の海に広く分布し、ほとんどは浅い岩礁やサンゴ礁に棲息しますが、汽水域に侵入したり、200mの深海で棲息する種類もいます。成魚の大きさも10cm~2mまで様々です。多くの種類は雌性先熟から性転換し、大きく成長した個体はほぼオスと思っていいです。

食性は肉食性で、他の魚類や甲殻類、頭足類などを大きな口で捕食し、時には自分の体の半分ほどもある獲物にも襲いかかります。

下顎が上顎より突き出る「受け口」、大きい頭と鰭などが身体的特徴です。体色は種類や成長段階によって美しく多彩に変化し、観賞魚として利用されます。一方、食用としても旨い種類が多く、特にマハタ属の仲間は高級食材として高値で流通されます。

【写真】水族館のタマカイ

一年を通して手に入るハタ

アカハタ(赤羽太)などマハタ属の仲間は、通年水揚げはあり、味もばらつきがありません。強いて言えば、春~夏が旬なのはマハタ(真羽太)やキジハタ(雉羽太)。逆に寒い時期~初夏が旬なのは、アオハタ(青羽太)やクエ(九絵)です。

高級魚ゆえに養殖研究も盛ん

安定した供給が困難だったハタ類も、近年養殖(蓄養)が行なわれるようになりました。日本ではマハタ、クエ、キジハタ、アカハタ、スジアラなどが養殖されています。

【写真】鍋の王様、クエ鍋!

生食と鍋で絶品の旨さを発揮するハタたち

淡泊なのにこってりと脂が乗ったハタの旨味は、他の白身魚では味わえないものです。また、熱を加えると身がギュッと締まり、ゼラチン質のコラーゲンもたっぷり摂れ、食感も楽しめます。

生食

赤羽太の薄造り

【写真】アカハタの薄造り(和歌山県和歌山市)

アカハタ(体長30cm前後)、アオハタ(体長35cm前後)、キジハタ(体長40cm前後)などの小型種を食すなら、特に生食をお勧めします。

活魚を締めて卸して、半日~1日程度寝かせると、旨みがグンと増します。卸したてのまだ硬い身は、コリコリの食感を楽しむにはいいですが、旨みに欠けます。そして、刺身はできるだけ薄造りにしましょう。心地よい食感と上品な甘さが同時に楽しめます。

成長すると体長1mにもなるマハタですが、この魚も、小振りなものはお手頃価格で入手できます。血合いの色が美しく嫌味のない天然モノはもちろん、脂が乗った養殖モノも、それぞれに旨いです。また、皮に旨さがありますので、湯引きにも挑戦したいところです。三枚に卸して皮付きのまま軽く茹で、素早く水気を取り、中は生の状態で冷蔵庫で急速冷凍します。

クエ鍋を食ったら他はクエん

マハタやクエ(体長1.2m、重さ50kg超)など大型のハタは、汁モノの料理に向いています。潮汁、味噌汁、煮付けなどももちろん旨いのですが、鍋はもう絶品です。脂、ゼラチン質、身の仄かな甘さが相まって、何とも言えない旨さです。小型のハタでも、刺身に捌いた後のアラを捨てずにアラ煮、兜煮、鍋などにしましょう。いい出汁がとれます。

【写真】あらのアラ!

清蒸(チンチョン)

中華の代表的な蒸魚料理です。赤が目出度いからか、アカハタがよく使われます。水洗いしたハタに切れ目を入れ、葱や生姜などの薬味を散らし、強火で蒸し上げます。蒸し上がったらあらためて薬味を散らし、今度は煙がでるほどに熱したピーナッツオイルをかけ、表面をカリッと仕上げます。醤油、魚醬、紹興酒、山椒などを合わせたタレでいただきます。

シガテラ中毒に注意!

バラハタなどの中には、シガテラ中毒の原因毒成分[シガトキシンなど]を持った個体が居ると言われます。シガテラ中毒にかかると、ドライアイスセンセーションなどの神経症状を呈します。つい先日も、スジアラと間違えてバラハタを販売したニュースが報じられました。消費者としても注意しましょう。

2016年4月12日 毒のあるバラハタを築地市場で誤販売

プロが素人を騙す闇 クエ偽装の実態

クエが超高級食材なばかりに、偽装が常態化していた事実が明らかになりました。

食べ比べたら判るのでしょうが、たまにしか口にしないクエを「ほらこれがクエだ黙って喰え(しつこい)」と出されたら、素人はひとたまりもありません。

プロの魚屋としての矜持ってものは、ないのでしょうか。そうですよね、金の為に無力な消費者を騙すのですから、言い訳できませんね。これでは、日本の食文化の未来が心配です。

自衛手段はほとんどありませんが、せめて記憶を風化させないことが大事だと思いますので、ここで列挙しておきます。

クエと偽りタラを販売 岸和田の業者

タラの一種「アブラボウズ」を高級魚のクエと偽り、販売したとして大阪府は19日、岸和田市の魚卸売業「矢崎」に対し、JAS(日本農林規格)法に基づき再発防止対策を求めるなど改善指示を出した。
府によると、同社は昨年10~12月、同市内の直営店などでアブラボウズ(1キロ当たり約2,000円)をクエ(同約5,000円)と偽ったうえ、1キロ当たり約2,000円で計約1,990キロを販売したという。
昨年12月、府に「アブラボウズをクエと偽って販売している」などと情報提供があった。このため、立ち入り調査をしたところ、偽装が発覚した。

【出典】産経新聞 2008年3月19日(アーカイブより引用)

福岡でもクエと偽り表示 県が日本料理店を口頭注意

福岡市の日本料理店「てら岡」(寺岡直彦社長)が、ギンダラ科のアブラボウズを、アラとも呼ばれ高級魚のハタ科クエと偽って販売していたとして福岡県は19日、日本農林規格(JAS)法違反で同社に再発防止を求める口頭指導をした。宮城県石巻市の水産卸会社から仕入れたもので東北農政局、石巻市も同法違反の疑いで調べを進めている。
アブラボウズは脂質が多くて、食べ過ぎると下痢などを起こす可能性もあるが、てら岡によると今のところ健康被害などは報告されていない。
対象の商品は、インターネットで販売していた「アラしゃぶセット(3人前)」(1万500円)など。同社は2002年から計19トンを仕入れ、販売していた。消費者からの指摘で誤りに気づき、今年1月からはこの商品の販売を中止した。
寺岡社長は福岡市内で記者会見し、仕入れ先の水産卸会社が本当はアブラボウズなのに証明書には「クエ」と偽って記載していたと説明。今後、この卸会社に対して法的措置を検討すると同時に「消費者に迷惑をかけた」と陳謝した。

【出典】中日新聞 2008年3月19日(アーカイブより引用)

青森でもクエと偽表示 県が2業者に改善指示

青森県は24日、別の魚を高級魚のクエと偽って販売し、日本農林規格(JAS)法が定める表示基準に違反したとして、同県八戸市の水産業者「丸吉」と卸売業者「八戸魚市場」に改善を指示した。
県によると、丸吉は2005年12月から2007年1月までと、同年2月から11月までの間、持ち船が水揚げしたギンダラ科のアブラボウズ約23トンをハタ科のクエと偽って表示し、八戸魚市場に販売委託。八戸魚市場は偽表示を知りながら、そのまま卸売りした。
同様の違反が大阪府などで発覚したため、農林水産省は漁業関係者や都道府県などに名称表示の適正化を求める文書を送付していた。

【出典】中日新聞 2008年3月24日(アーカイブより引用)

「これまで3千トンを販売」 クエの偽表示で青森の業者

青森県八戸市の2業者が、日本農林規格(JAS)法に違反し別の魚を高級魚のクエと偽って販売していた問題で、水産業の「丸吉」は24日、共同通信の取材に対し「約40年前から販売していた。これまで約3,000トンをクエとして売った」と明らかにした。
また丸吉が水揚げした魚の販売を委託されていた卸売業者「八戸魚市場」は「船や市場で30年以上前からアブラボウズをクエと呼んでいたので、そのままにしていた」と話した。
県によると、同様の違反が発覚した大阪府岸和田市の卸売業者「矢崎」を府が調査したところ、八戸魚市場から仕入れたとの書類があった。これを受け国と青森県が八戸魚市場と丸吉を調査した。両社は、食品偽装が相次いで発覚したことを受け、昨年末にクエからアブラボウズへ正しい表示に戻したという。
青森県内ではクエとアブラボウズの卸売価格に大差はないが、関西や九州地方ではクエが数倍高く取引されるという。

【出典】中日新聞 2008年3月24日(アーカイブより引用)

コメント

  1. debux2 より:

    薄造りにカボスと濃口醤油!半身をしゃぶしゃぶで食して、残りを鍋!
    身の大きさも、最高!!!

  2. Fish Lovers Japan より:

    debux2さん!
    そうですね。羽太は、生食も火を通しても、甲乙つけがたい旨さですね。

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