アオリイカはイカの王様と呼ばれ、数あるイカの中でも最も旨いとされています。
また、自分より大きい魚にも攻撃するアオリイカは、脳が非常に大きく「魚介の霊長」と呼ばれるほど賢い生き物でもあります。危機回避能力に優れ学習能力も高く、捕獲が難しい点で釣り人にも人気です。
目次
賢く好戦的なイカれた生態
アオリイカは、ツツイカ目 開目亜目 ヤリイカ科 アオリイカ属。寿命は1年です。
春〜夏にかけて、海藻や岩の隙間に、一ヶ所に固めて寒天質の卵鞘(らんしょう)を産みつけます。卵鞘内のバクテリアが魚の嫌いな物質を出し、卵が食べられる事はありません。夏になると孵化し、体長数cmの幼体は、落ち葉のように擬態し、浅い海で波間に漂います。体長15~20cmほどまで成長し冬になると、水温の安定した深場へ落ち、春に水温が15℃を超える頃から、再び沿岸へ戻ってきます。
沿岸域に生息するイカとしては大型で、個体によっては1m、6~7kgにも達します。胴が丸みを帯び、外套膜(がいとうまく)のほぼ全長に、半円形のヒレ(エンペラ)があるのが特徴です。また、外套膜の内部には軟骨がありますが、コウイカ類のように石灰質の殻は持ちません。
肉食で、イワシやアジなどの小魚のほか、ネンブツダイやベラ、エビ、シャコ類などを好みます。10本ある足の内2本の長い触手を伸ばして、獲物を素早く捕らえます。その速さは0.1秒以下。捕らえた獲物の後頭部をかじり取って絶命させた後、安全な場所に移動してから食べます。
ある程度食欲が満たされると、餌を弄ぶ(次々に捕まえては一部を齧るだけで食べ残すなど)ことも知られています。何とイカれた烏賊なんだ!
他のイカ同様、周囲の環境によって体色を自在に変化させ、身を守ります。更に、身の危険が迫ったときは、墨を吐いて敵の目をくらませ、吸い込んだ水を漏斗(ろうと)から吹き出して一気に逃げます。
冬場を除きほぼ周年で漁獲される
漁獲のピークは2度あります。
- 春~夏:産卵群(大型個体が産卵のため浅場にやってくる)
- 秋:新規加入群(まだ水温が高く子イカが成長し始める時期)
太平洋側の神奈川県~鹿児島県は、1~3月の低水温期以外、ほぼ周年漁獲されます。
日本海側の富山県、京都府では、9~12月の新規加入群が漁獲の中心ですが、対馬暖流の影響が強い玄海域(佐賀県や長崎県五島など)では太平洋側同様にほぼ周年漁獲されます。
一方、年間を通じて水温が20℃以上ある沖縄では周年漁獲され、明瞭な季節変化はみられません。
僅かしか流通しない国内モノ
国内で捕獲されるアオリイカの漁獲量は少なく、料亭などで消費される高級品です。
昨年度(2016年4月~2017年3月)の東京都中央卸売市場の入荷量の合計は、126t。これは全イカ類の僅か2%にしか過ぎません。三重県、長崎県、鹿児島県の順に多く、このトップ3件で流通量の55%を占めます。一般に、販売されているものは、タイなど東南アジアからの輸入品が多いようです。
【出典】東京都中央卸売市場 市場統計情報
【注】アオリイカは、農林水産統計の対象でなく、全国的な漁獲量は把握できません
様々な名で呼ばれるアオリイカ
標準和名のアオリイカは漢字で障泥烏賊と書きますが、これは、ヒレの色や形が馬具の「障泥(あおり)」に似ているからです。
地方によっては、様々な別名で呼ばれています。外見が芭蕉の葉に似ることからバショウイカ、藻場に産卵するためモイカ、九州地方ではミズイカ、クツイカ、沖縄地方ではシロイカなどです。
旨みも食感もイカしてるぜ
イカの王様と呼ばれ、旨み、食感共に最高とする向きも多いイカです。
旨みを決定づけているのは、甘みを感じる呈味(ていみ)成分である「遊離アミノ酸」で、グリシンを筆頭に、アラニン、プロリンなどが、イカの中では最も多く含まれています。他のイカ同様、タウリンも豊富に含みます。
また、ねっとりとした食感も魅力です。肉質は弾力に富み、適度な厚みがありながらも軟らかく、熱を通しても硬くならないので、生食はもちろんのこと、どんな料理にも応用できます。
調理法も万能と言っていい
水揚げ後の鮮度を保つには、「活き締め」をすることが大切です。締めると、怒って黒い体が一瞬で透明になるので、判り易い!
この釣り情報共有サイトで詳しく解説しています!
生食
刺身は最高に旨いです。口の中に拡がる甘みは、他のイカを遥かに凌駕します。柔らかく厚い身は、ご飯との相性も抜群です。
沖漬け、ルイベ
沖漬けや、それをさらに冷凍したルイベも美味。身はもちろん、ワタや墨の部分も濃厚で奥深い味わいを楽しめます。作り方は、醤油、みりん、日本酒を適量煮立てて冷ました漬け汁に、新鮮なアオリイカを入れて2、3日冷蔵したものをさらに冷凍するだけ。凍ったままスライスし、半分溶けかかった状態でいただくと、もう堪りません。
天麩羅
アオリイカは天種としても優秀です。皮を剥いた胴の部分に、衣をつけて揚げます。ゲソもついでに揚げちゃいましょう。加熱により甘味・旨みが強くなり、かつ堅くならないので、非常に旨いです。
イカリングのフライ
小振りのアオリイカの胴の部分を輪切りにして揚げます。熱を通しても硬くならず、ジューシーなのでスルメイカよりもゴージャスな味です。
墨汁
カツオ節だしに豚バラでだしを作り、墨を溶かし込んでゲソと胴の部分を煮ます。と、レシピにはこう書いてありますが、豚バラはなくても十分旨いです。柔らかいイカの身が、とても美味。
一夜干し
小振りのアオリイカを開いて立て塩につけて干します。温かい時期には、冷蔵庫にラップしないで入れておくだけで一夜干しになります。比較的生に近く、焼いても軟らかく、甘味が強いのが特徴です。
その他
醤油焼き、ソテーなど、加熱するもの全般をカバーします。
また、墨も実に旨いのです。パスタが定番ですが、徳島県牟岐町では、イカスミ入りのアオリイカ黒焼きそばというB級グルメを開発したらしいです。
烏賊がだったでしょうか。
あなたも、あおりいかラブになりましたか?
コメント
綺麗な姿ですなぁ、青に透明な身体が映えていますね。
私は耳の部分が大好きです。(ん?誰でもかな・・・)
bebux2さん!
アオリイカ、特に旨いのは耳(えんぺら)ですね。
旨いだけでなく、姿も美しいですよね!