剣のような姿のケンサキイカ。これからが旬です。
また「種類がいろいろあって烏賊ん」という方のために、代表的な7種のイカをまとめました。
目次
白、時々赤。でも紫ではない?
ケンサキイカ(剣先烏賊)ほどややこしいイカはありません。何故なら、「白いか」と呼ばれたり、正反対に「赤いか」と呼ばれたり、名前のバリエーションが多彩過ぎるからです。
築地市場などでは、山陰や九州北部で漁獲される胴のやや短いイカを「白いか」、伊豆諸島などで漁獲されるやや細長いイカを「赤いか」と呼んでいます。しかし生化学的な検査から、この2種類のイカは同じケンサキイカであることが判っています。ケンサキイカは、産卵期も4~10月の長期にわたり、これら生まれた時期や、棲息場所によって、大きさや体形が様々に変化することが知られています。マルイカ、ブドウイカ、メヒカリイカ、メトイカ、ダルマイカなど、多様な地方名がつけられた背景には、こうした激しい個体差があるからだと考えられています。
ややこしい点は他にもあります。九州の一部では、このケンサキイカのことを「やりいか」と呼ぶのです。標準和名ヤリイカは、ケンサキイカと同じ[ツツイカ目 ジンドウイカ科]ですが、あくまで別種です。
もっとややこしいのは、標準和名「アカイカ」の存在です。[アカイカ科]のアカイカは、体形は同科のスルメイカに似ていますが、外套長(胴の長さ)が45cmを越え、大型です。紫色がかっているため、市場では「ムラサキイカ」と呼んでいます。肉厚のためイカリングなどの惣菜や加工品に使われ、また、冷凍皮無しロールイカとしても多く出回りますが、生食されることも生鮮流通することもありません。
もう、いい加減にしてください。表にしないと、どうにも分りません!
覚えると楽しい! そもそもイカって何種類いるのさ?
ちょっとごちゃごちゃしました。いったん整理しましょう。
一口にイカといっても、いろいろ種類があります。当然、姿形から味わいまで、それぞれ違います。
ここでは、生鮮流通する代表的な7種のイカを、比較・図解します。覚えると、魚屋で選ぶ楽しさが倍増しますよ!
アオリイカ(障泥烏賊)
[ツツイカ目 ジンドウイカ科]
甘みのある肉厚な身はイカの中で最も旨いとされ、イカの王様と呼ばれます。刺身はもちろんのこと、火を通しても固くならないので、煮つけ、バター焼き、から揚げなどでも旨いです。冬場を除きほぼ周年で漁獲されます。以前にも紹介しました。
ヤリイカ(槍烏賊)
[ツツイカ目 ジンドウイカ科]
アオリイカ、ケンサキイカと並んで人気の高い種です。刺身でも加熱しても旨いです。「冬のヤリイカ、夏のケンサキイカ」と言われるように、旬は1~3月です。
ケンサキイカ(剣先烏賊)
[ツツイカ目 ジンドウイカ科]
ヤリイカと外見はよく似ていますが、胴がやや太く、触腕がずっと長いのが特徴です。アオリイカ、ヤリイカとともにスーパーに並ぶことは稀で、デパートや高級魚店、料理店、寿司屋などでお目にかかります。旬は7~9月です。
スルメイカ(真烏賊)
[ツツイカ目 アカイカ科]
目にする機会が最も多いイカです。お祭りの屋台でも焼かれています。アニサキスに注意が必要で、鮮度のいいもの、業務用の冷凍庫で冷凍したものは生食できます。しっかりとした歯触りとねっとりした食感が旨いです。また、新鮮なワタを使えば塩辛ができます。広範囲で漁獲されるので、生鮮ものも7~2月と長期間流通しますし、最近は冷凍ものが1年中出回ります。
ホタルイカ(蛍烏賊)
[ツツイカ目 ホタルイカモドキ科]
体長5cm程度の、可愛いらしいイカです。富山や兵庫で漁獲されたものが、3~5月の期間限定で流通します。ワタも丸ごと食す旨みは格別です。以前にも紹介しました。
コウイカ(甲烏賊)
[コウイカ目 コウイカ科]
墨の破壊力が抜群で、「スミイカ」の異名をとります。発泡スチロールの中で真っ黒になっている丸っこいイカを魚屋で見かけたら、それはコウイカです。肉厚の身は刺身にしても旨いですし、江戸前の天麩羅には欠かせません。旬は12~3月。墨は、所謂イカスミとしてパスタやパエリャなどに利用するとこれまた旨いのですが、歯が真っ黒になります。余談ながらこの墨は、かつてはセピアと呼ばれ、染料として利用されていました。
カミナリイカ(モンゴイカ、モンゴウイカ、紋甲烏賊)
[コウイカ目 コウイカ科]
コウイカを大型にした感じです。輸入ものがほとんどで、国産ものはあまり流通しません。
取扱量もお値段も違います
烏賊以下のグラフは、東京都中央卸売市場における、2016年度のイカの種類別取扱量[単位:t/年]です。
総取扱量の実に56%がスルメイカ。次いで21%のヤリイカ、8%のコウイカとなっています。希少なアオリイカは2%、ケンサキイカは更に少なく1%です。
【出展】東京都中央卸売市場 市場統計情報
地域によって相場に違いはありますが、単価は概ねこんな感じです。
↑ アオリイカ
高 ケンサキイカ
ヤリイカ・コウイカ
安 ホタルイカ
↓ スルメイカ
温暖な海域を好むケンサキイカ
スルメイカやヤリイカより温暖な海域を好むケンサキイカは、本州中部から東シナ海、南シナ海、東南アジア、オーストラリア北部まで分布します。日本近海では、沿岸からやや沖合に棲息します。
肉食性で、弱った魚、甲殻類、小型のイカなどを食べます。寿命は1年で、成長は早いです。孵化してから8ヵ月で胴長20cmに達します。オスとメスの成長には差があり、メスは最大でも30cm程度、オスは40cmを超えることもあります。
呼子では「やりいか」と言えばケンサキイカ
主な漁獲地は、山陰から九州北部です。特に玄界灘は水揚げ量が多く、中でも佐賀県呼子では「やりいか」と呼び、観光資源の目玉になっています。
秋から冬にかけては80~100m程の深海に潜み、春から夏にかけて産卵のため20~40m程の浅い内湾に寄ってきます。水揚げのピークもその時期で、一般に夏のイカとして知られていますが、生食なら、7~9月、子持ちを煮付けるなら5~6月が旬だと言えるでしょう。
新鮮な個体を選ぶポイント
獲れたばかりのケンサキイカは透明です。時間の経過とともに表皮の色が鮮やかな赤色になり、鮮度が落ちてくると今度は透明感のない白色になります。選ぶなら、色がまだ鮮やかな赤いものにしましょう。ちょっと触った時にスーッと色が変わる個体は、新鮮だと言えます。
ケンサキイカは、新鮮なうちに丸のままの状態で冷凍できます。また、捌いて短冊にした状態でラップに包み冷凍し、食べる前に流水で解凍しても刺身で食べられます。
濃厚な甘味と旨み、加熱しても硬くならない万能食材
柔らかく、癖が無い上品な味わいで、生食の他にも、茹でる、塩焼き、煮る、揚げる、炒めるなど色々な料理に活かせます。
『スルメ』の原料としても”一番スルメ”と呼ばれるほど珍重され、スルメイカを材料にしたものより旨いとされています。
刺身
胴や耳(エンペラ)は生で刺身に切り、ゲソは軽く茹でて添えるといいでしょう。ねっとりとして、イヤミのない上品な甘味と旨みを堪能できます。
なめろう
生姜、葱、味噌と共に、胴や耳をよく切れる包丁でたたきます。スルメイカやヤリイカよりもねっとりと全体に馴染みやすく、味噌と相まって、絶品です。
一夜干し
開いて内臓を取り除き、塩をふって半日ほど干します。冷蔵庫で寝かせてもいいです。甘味を伴って香りがたち、実に旨いです。
天麩羅
熱を通すと、より一層甘さが引き立ちます。揚げたてを塩でいただくと、それはもう堪りません。
炒め物
ゲソや耳を刺身にしないなら、サッと炒めて、醤油、味醂で味つけしてしまいましょう。ししとうや鷹の爪と一緒に炒めても、仕上げに唐辛子をふるだけでも、酒の肴にサイコーな一品の出来上がりです。もちろん、ニンニク+オリーブオイルで炒めて洋風にしても、ブロッコリーや青梗菜と共にとろみをつけた中華でも、お好きなようにアレンジできます。
酢味噌和え
小振りのものを茹でてヌタにします。熱を通しても軟らかく、また酢味噌がイカの甘みを引き立て、とても旨い一品になります。青みは、葱でも韮でも、お好みで。
コメント
耳は素麺、ゲソは塩焼き、身は天ぷらでしょうかね・・・
ちわっす。
相変わらずイイ記事を認めますね~。
みなさんは、魚の名前で、よく最初に「ま」がつくのを目にしませんか?
マイカ、マダイ、マアジ、マサバ。。。
これはつまり、その土地で主だって獲れる種類のことを示します。
日本の場合、マイカは、スルメイカのことですが、日本語流にすれば、ペルーのマイカは、アカイカ(ジャイアントスクイッド)になります。
因みに、呼子のイカは、東京では、イカセンターって居酒屋で、タイミングが合えば活で食べることができます。
今は、大雨で時化てるから入荷できないけど。
今年は九州が災難の年だね。今日も鹿児島でデカイ地震があったし。鹿児島は、地震が少ないのに。
皆で九州の回復をお願いしたいね。ね、神さま。
debux2さん!
そうですよね。耳こそ生食が旨いと思います。
Sakana_Bossさん!
ご愛読ありがとうございます!
そうですか。呼子のイカは、イカセンターで食べられますか。一度行ってみます!
ホント、九州は最近、災難続きですね。まぁイカが入荷しないこと自体は大事ではありませんが、痛感するのは、東京に居ても全国の食材に支えられているということですね。